2010年03月04日
『誰がかまうもんか?! ―ラメッシ・バルセカールのユニークな教え』
ブレイン・バルドー著 高木 悠鼓訳
2010年2月25日発行 2625円(税込)
誰がかまうもんか?! ―ラメッシ・バルセカールのユニークな教え―
著者:ブレイン・バルドー
販売元:ナチュラルスピリット
発売日:2010-02-25
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本書のタイトルはここ数年よく見かける自己啓発的な物語を連想させますが、インドのスピリチュアルな教えです。ラメッシ・バルセカールという人はすでに亡くなれられているようですが、本書は主に複数の人々との短い対話形式になっています。
ラマナ・マハリシであれば知っている方もいると思いますが、本書の内容はラマナ・マハリシの教えと似ており、実際に本書においてもラマナ・マハリシの名前は何回か登場します。
ラマナ・マハリシは「私とは誰か?」という問いの探求をすすめていますが、本書でもそのことがテーマになっています。
現実逃避的な自分探しは、短い目で見ると非生産的になりやすいのですが、現実世界の問題をある程度乗り越えた宗教的に真摯な探求は、本書を読むと悟りにつながるのではないかと思わされます。
本書を読むと、言葉では悟りの状態がどのようなものであるかがわかります。結論としてはエゴが存在しないことの認識なのですが、これは仏教と同じ考えです。
おそらく釈迦が実際に語ったのは本書に書かれているような内容だったのではないかと想像しますが、仏教は世俗のシステムに組み入れられて組織がヒエラルキー的な構造を持つことにより、必要以上に難解になってしまった面があります。
興味があって本書を読んだとしても、すぐに悟りを得るようなことはできないと思いますが、本書に書かれているようなことを心の片隅に置いておくと、長い人生でさまざまなつらい体験、満たされない思いを経験することによって、エゴが苦しみを生じるメカニズムを少しは意識できるようになるかもしれません。
悟るためには山に籠もるのもよいのかもしれませんが、エゴによる苦しみの存在を意識するためには、自分の欲望や恐れなどを実感しやすい俗世間の状態にいる方がよいこともあります。
エゴの認識が少ない方がより苦しみがないというとは、宗教的に語られてきました。宗教的な教えに正しさがあるとすると、科学的な面とも矛盾しないはずなので、今後はエゴの「錯覚」をなくすことによる苦しみからの解放についても、脳科学的に整合性のある結果が出てくるかもしれません。