2010年03月19日
『決算書でよむ企業と業界力』
国貞 克則著 2010年3月19日発行 800円(税込)
決算書でよむ企業と業界力 (ベスト新書)
著者:國貞 克則
販売元:ベストセラーズ
発売日:2010-03-09
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年度初めが近づいてきているので、最近は書店で決算書について書かれている新刊をよく目にします。それぞれの本が独自の工夫がなされていて興味深いのですが、本書のウリの一つは数年前のベストセラー『決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法』の著者によって書かれたものであるということです。
本書でも図がふんだんに用いられており、なんと100個以上あります。本書の目次は以下の通りです。
- 決算書は簡単に読み解ける
- 財務諸表と株式指標の関係を知る
- 図解分析で企業と業界力が見えてくる
- 業界に横串を入れて比較する
目次にあるように、本書では株式指標と財務諸表の関係についても少し触れられていますが、本書のメインは第3章の各業界の代表的な企業を図によって並列的に比較分析している部分です。分量的にも全体の半分くらいあります。
ほとんどの人が知っている企業が採り上げられていますが、各業界の決算書、とくにバランスシートの特徴と、業界内における企業間の細かい違いや特色などが経営状況も含めて分かるようになっています。
決算書を大まかに分析する上でのポイントは、同業他社との比較と、経年の比較ですが、本書では両方とも解説されています。
本書は分かりやすく書かれているので、本書を読むと決算書についてよく分かったように感じますが、決算書が読めるようになる上でのハードルは、本書のような分かりやすい切り口を自分の頭の中でできるようになることです。
本書に載せられているのは、ほとんどが「きれいな」決算書です。そうでないものはJALがありますが、すでに倒産してしまっているので採り上げやすいのかもしれません。本書のような本には、経営状況のよくない企業の決算書はなかなか例として出しにくいところだと思います。
終わりのあたりで、2009年度における日本の上場企業1458社の平均的PLとBSがあります。当期純利益の平均が0.2%などというのはなかなか泣けるところです。1000万円売り上げて利益が2万円ということなので、株価がさえないのも仕方ありません。
知識が全くない方が本書を読むのであれば、本書を読む前により総論的なことが書かれているものをまず読んだ方がよいでしょう。そうすると本書のよさもより生きてくると思います。