2010年03月29日
『悪の経営学』
大村 大次郎著 2010年3月7日発行 1470円(税込)
悪の経営学
著者:大村大次郎
販売元:双葉社
発売日:2010-02-24
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本書は『悪の会計学』『悪の税金学』に続くシリーズの三冊目です。元国税調査官というのが著者のウリになっています。本ブログでも過去に何冊か本を紹介させてもらいました。
著者の新刊は過去の著者の本にすでに書かれている内容も多いのですが、文章が読みやすいためつい読んでしまいます。本書はタイトルに「悪の〜」とありますが、別に悪いことをして経営することを勧めているわけではありません。本書の目次は以下の通りです。
- 「借金がうまい人」の資金調達
- 税金ほどバカバカしい支出はない
- 悪の人事管理術
- 税務署には逆らわず、従わず
- コネと備えで経営危機を乗り切る
悪の本質は奪うことですが、本書で著者が言いたいのは一方的に奪われることについての注意です。税金も節税をしないと必要以上に「奪われて」しまいます。節税の方法を税務署が教えてくれることはありませんし、そもそも税務署にはそのような義務もありません。
税金に限らず、本書では要領をよくすることを「悪」という言葉で表現しているようです。と言っても必要以上に「奪う」ことを勧めているわけではありません。
ビジネスの世界では、奪われることについて意識できないと、「自然に」奪われてしまいます。言い値で買う人に対して、自ら値下げを提案する業者はいません。価格は売り手と買い手の双方が納得いく価格に収束させる必要がありますし、生き残るためには必要なことです。
これは善悪の問題ではなく、そのようなルールのゲームということです。このことは男女関係でも同様であり、ある程度「悪」の要素がなければ、うまくいきにくいのも同様です。
与えるだけの関係は宗教的には理想な感じがしますが、与えるだけの人はビジネスや男女などの俗世間的な関係においては、むしろ相手に否定的にとらえられてしまうかもしれません。
莫大な価値を創造する人はほとんどいませんが、あまり価値を創造できないのに必要以上に与え続ける人と事業パートナーになってしまうと、自分からも価値が流出してしまうことになります。
気前のよすぎる男性は結婚するまではよいかもしれませんが、結婚すると家庭のお金、つまりは半分妻のものであるお金が外部に流出してしまいます。
女性は気前がよすぎる男性については適当にうまく対応して奢ってもらったりしますが、その男性と結婚することには不安があるはずです。それと同じように、交渉して価格を最適化しない買い手はよいお客さんですが、共同で事業をする相手としてはまた別の意味を帯びてきます。
ビジネスや男女関係における「悪」はまさに必要悪です。本書を読むと、中小企業の税金についての「悪」の部分がある理解できると思います。