2010年04月11日

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『リーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰か』4

桂木 明夫著  2010年月4月1日発行  1680円(税込)

リーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰かリーマン・ブラザーズと世界経済を殺したのは誰か
著者:桂木 明夫
販売元:講談社
発売日:2010-04-02
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著者は日本におけるリーマン・ブラザーズの元社長をなさっていた方です。タイトルにはややきつい言葉が使われていますが、そのあたりから著者の無念さのようなものが感じられます。

リーマン・ブラザーズが倒産してからすでに一年半以上が過ぎました。世界的に株価も少し持ち直し、当時の生々しい記憶が薄らごうとしています。本書はもう少し早い時期に出版される予定だったそうですが、事情により最近の出版になったようです。本書の目次は以下の通りです。



  1. 破綻へのカウントダウン
  2. 身売り
  3. カリスマ vs. 財務長官
  4. リーマンを潰した真犯人
  5. 「百年に一度」の正体
  6. 強欲の連鎖
  7. ウォール街は死んだか
  8. 2008年9月の教訓

本書の読みどころは、やはりリーマン・ブラザーズの内部の中心的な人物によって書かれていることでしょう。本書によるとリーマン・ブラザーズが倒産したときも、日本法人は黒字だったそうですが、米国の本社が破綻したら運命をともにするのは仕方なかったようです。

金融危機の原因となった諸々のことは数多くの本で語り尽くされた感があり、本書にもそれらについて分析は書かれていますが、本書でないと読めないようなことはないかもしれません。

著者が本書を通して言いたいことは、おそらく本書の最後の数行の部分に凝縮されています。

「ポールソンおよびFRBが、自国における金融システムの崩壊を止めることができなかっただけでなく、それが世界中にどのような形で伝播し、世界の金融システムのみならず各国経済に対し、致命的なダメージを与えると予見できなかったことは、あまりにもお粗末ではなかったか---私は最後に、こういいたい。」

リーマンはアメリカの金融行政サイドによって恣意的に潰されてしまった、著者が言いたいのはそのことだと思われます。もちろんリーマンにもそれなりの過失はあったはずなのですが、リーマンだけが潰されるほどの白黒はっきりした過失はなく、他の金融機関と比べても過失は連続的な違いしかなかったはずです。

アメリカの金融行政サイドとしても苦しいところで、すべての金融機関を潰さずに救済していたとしたら、それはそれでモラルハザードとして非難されていたことでしょう。

アメリカの金融行政サイドは、すべての金融機関を救済して国民全体から非難されるか、リーマンを潰すことによってある程度の金融危機を覚悟した上で一部から悪く思われるか、これらの二択で後者を選択したということになります。

本書は著者の日記がもとになっているので、記述にリアリティがあります。もう少し早く出版されているとよりインパクトがあったかもしれませんが、、金融史に残る事件の記録として貴重な本であると思います。



investmentbooks at 23:58│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--世界経済 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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