2010年04月22日
『電子書籍の衝撃』
佐々木 俊尚著 2010年月4月15日発行 1155円(税込)
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2010-04-15
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iPadの日本発売を間近に控えているためか、本書以外にも電子書籍についての本がボチボチ出版され始めています。iPadは4月末の発売予定に合わせて購入するつもりでしたが、残念ながら延期されてしまいました。
本書は電子書籍とそれに関連する出版業界の最新動向や、今後の予測について著者の見方が述べられている本です。本書の目次は以下の通りです。
- iPadとキンドルは、何を変えるのか?
- 電子ブック・プラットフォーム戦争
- セルフパブリッシングの時代へ
- 日本の出版文化はなぜダメになったのか
- 本の未来
本書のスタンスは、紙の本から電子書籍への流れは大きなトレンドであり、そのトレンド自体が本や出版業界にまつわる種々のことを大きく変化させるであろうということです。
電子書籍の普及が音楽のネット配信とイメージを重ねて予想されています。音楽のネット配信が急速に広まったことを考えると、出版物をめぐる様相は今後数年でガラリと変化してしまう可能性があるのかもしれません。
日本での電子書籍の普及はもう少し先になりそうですが、個人的には本を置くスペースが不要になり家が広くなり住居のコストが減ることと、ふだん持ち歩いている数冊分の本の重さが軽くなることなどがわかりやすいメリットと思います。
価格が安くなり、購入の手続きも容易になり、保管スペースも不要となると、本を買う冊数(冊という言葉は適当でなくなるかもしれませんが)が今よりも増えてしまうかもしれません。あるいはいつでも数十秒で入手できるという安心感から減る可能性もあるかもしれません。
電子書籍について本書に描かれていることは、一つ一つのことについては現在でもすでに実現していることがほとんどです。たとえばセルフパブリッシングについては、情報商材によって実現されています。
電子書籍については何か新しいものが突然出現するといったものではなく、今まであったことの量や程度が臨界点を越えて質的に変化するといったような感じになるのではないかと思います。その質的な変化が本書のタイトルにある「衝撃」という言葉で表現されているようです。
個人的には、電子書籍は音楽のネット配信ほどにの急激な変化を起こさないのではないかと考えています。しばらくは紙の本と電子書籍が両立する時代が続くのではないでしょうか。
もっともこれは紙の本に対する愛着があるのでバイアスがかかっていると思います。考え方によっては、紙の本に愛着の強い人間がiPadを買おうとしているところに、時代の転換点を感じるべきなのかもしれません。