2010年04月28日

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『富・戦争・叡知』4

バートン・ビッグス著  望月 衛訳

2010年4月23日発行  2625円(税込)

富・戦争・叡知富・戦争・叡知
著者:バートン・ビッグス
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2010-04-24
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投資について書かれた著者の『ヘッジホッグ』はこのブログで3年以上前に紹介しました。当時の記事には「いままで読んだ投資関係の書物でベスト3に入ります」とあります。

あれから3年以上経ちましたが、『ヘッジホッグ』は現在でも少なくともベスト5に入ります。そのため本書は著者名ですぐに購入しましたが、やはり期待を裏切らない内容の濃さがありました。



本書は第二次世界大戦中の主要国の株価の変遷と、戦争中の大きなイベントの記述から、市場の「叡智」や先見性が検証されています。本書の記述からは、株価はおおむね戦争の展開をなによりも早く、そして正しく織り込んで推移していたようです。

本書の原書は2008年に出版されており、本書は大部であることからその数年前に書かれていることが想定されます。まだ今回の世界的な金融危機が起こっていなかったため、当時の市場に対する肯定的な評価が感じられます。

金融危機により、現在は市場の「叡智」に対する不信感がまだうっすら残っていますが、そのことによって本書の価値が損なわれているようには思われません。

本書の読みどころの一つは、著者の幅広く緻密な第二次世界大戦の記述にあります。ただし、このあたりは詳しすぎるため、あまり第二次世界大戦の歴史に興味のない方には量的に多すぎると感じる部分かもしれません。

本書を読むと、著者は歴史について読んだり考えたりすることを愛されていることが伝わってきます。このあたりは前著でも感じられましたが、本書ではその探求結果がいかんなく発揮されています。

第二次世界大戦では日本も主要国の一つであったため、本書では少なからぬ分量を割いて、戦争中やその前後の日本、そして日本の株式市場について述べられています。

第二次世界大戦については日本には日本の戦争史観がありますが、アメリカの知的エリートがどのように第二次世界大戦における日本を眺めるかについて書かれていることも本書の読みどころです。別の視点からの日本が浮かび上がってきます。

戦争は富を破壊したり、富の分布を大きく変化させたりしますが、戦争と市場についての分析を通じて、富の保全に対する考察があるのも本書の別の読みどころです。

長期の歴史を考えると、あるいはここ100年だけのことを考えても、戦争や自然災害などの突発的なイベントによる富の喪失や分布の変化は頻繁に起こっているといえそうです。このあたりは戦後の日本にいると意識しにくいですが、戦前から戦後に資産を大きく失った日本人は多かったことでしょう。

戦争などの突発的なイベントに備えて、本書では過去の分析からどのように富を守るかが書かれています。著者は債券や現金に対する株式の有利さについて強調されており、購買力のことを考えると、資産の75%を株式で保有することを勧めています。

その他に富の保有形態として、不動産、事業、美術品、宝石、さらには農園までもが考察されています。

本書は第二次世界大戦にあまり興味のない方にとっては、戦争の具体的な記述がやや多すぎるかもしれませんが、市場や資産運用に対する数多くの洞察が豊富であり、株式投資に対する考察を通じて自分の世界を広げたい方におすすめできる本と思います。



investmentbooks at 23:48│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--投資一般 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
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2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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