2010年05月08日
『あなたが投資のプロからカモにされる理由』
小林 幹男著 2010年月5月10日発行 1575円(税込)
あなたが投資のプロからカモにされる理由
著者:小林 幹男
販売元:ぱる出版
発売日:2010-04-28
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著者は以前にリーマン・ブラザーズにいたこともある方です。以前に『「貸せない」金融―個人を追い込む金融行政』という本をこのブログで紹介したことがあります。
本書の大きな柱は二本あり、一本はタイトルの通り「投資のプロからカモにされる理由」について、そしてもう一本が日本経済や世界経済に対する著者の見方です。著者も書かれているように、著者の見方はポジショントーク的なのですが、そちらの方が読んでいて面白い部分です。
本書の目次は以下の通りです。
- あなたが「投資のプロ」からカモにされる理由
- マスコミや専門家の「ウマイ話」にダマされるな
- 不況時代には「堕ちる企業」へ投資しろ
- 「堕ちる企業」の見極め方
- 「中国の奇跡」のまやかしを読み解く
- 「百年に一度の危機」はおとずれたか
- 「ウマイ話」にダマされない方法
- 不況時代の「実のある投資」
- 「負けない投資」の心得
本書に例として数多く載せられている「ダマされた話」は投資の素人のみならず、金融のプロがダマされた話も少なからず出てきます。いろいろな話がありますが、やはりポイントはリスクとリターンのバランスが取れていないことに尽きると思います。
投資についての「詐欺」のすべてを見抜くのが難しいのは、騙す方も最初から騙すことを完全には意図していない場合もあるからです。上場企業の決算発表の時にCEOが明言した来年度の目標を、次の年に達成できないことはよくあることです。
本書に書かれているようなパターンに慣れれば、おそらく最初から騙そうと意図している話を見抜くのはそれほど難しくはないかもしれません。しかしながら、騙す意図がない場合は見抜けません。そもそもその意図がはっきりしないからです。
よって究極的には相手が騙す意図があるかないかよりも、その話自体の実現可能性を自分で判断する必要があります。あるいは一定の割合で「ダマされる」ことを織り込んで投資するくらいに考えておいた方がよいかもしれません。
本書には心理的な観点からの話が出てくるのも面白いところです。著者はお金のコントロールについて、つまりは心のコントロールであると思われているようです。
お金のコントロールが心のコントロールに大きな影響を受けるのであれば、お金を心の動きから切り離せばよいという考え方もあるかもしれませんが、切り離すこと自体にコントロールが必要なので、やはりお金のコントロールは心のコントロールとは切り離せないと思います。
本書の終わりにそれらのことがまとめて書かれていますが、最後の2ページがなかなかいいのですが、そこの部分に目を通すだけでも本書を読む意味があるかもしれません。