2010年05月11日
『お金で騙される人、騙されない人』
副島 隆彦著 2010年月4月25日発行 777円(税込)
お金で騙される人、騙されない人 (幻冬舎新書)
著者:副島 隆彦
販売元:幻冬舎
発売日:2010-04
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本書は著者の初めての新書本と思い少し検索してみましたが、かなり以前にちくま新書から英文法の本を出されていました。そういえばそうだったと思い出しましたが、最近は金融や経済の本を数多く書かれています。
著者の本には独特の「情念」のようなものがあり、そのあたりで好き嫌いや評価が分かれるところかもしれません。本書の目次は以下の通りです。
- あなたのお金は銀行、証券、生保に狙われている
- 金融業界は鬼の巣窟
- 「騙されない」と思う人ほど騙される
- グローバルに仕組まれた金融商品の罠
- 大事な資産を守り抜くために
章のタイトルからもわかりますが、金融業界に対してかなり否定的な見方をされており、業界のあり方に対して警鐘を鳴らしているような内容です。
現在は相場の状態がよくないため、含み損を抱えた人や実際に損を実現した人が多い状況なので、本書の内容は共感されやすい時期なのかもしれません。
ただし、状況が悪いときだけの状態で金融機関を評価してしまうのは、業界の方にとって少し酷かもしれません。相場の状態がよいときには、金融商品を買うことによって利益を得ている人も数多くいたはずだからです。
そのような意味において本書はやや見方が偏っているとは思うのですが、著者独特の世界観や物事のとらえ方を面白く感じられる場合もあると思います。
著者によると、大きなトレンドに対する著者の予測はほとんど外れたことがないそうです。著者の過去の本を振り返ってみると、流れとしては外れてはいないかもしれませんが、著者が予測したほどには物事が大きく実現していないということはあるかもしれません。
しかしながら、たとえばドルが下落するなど、将来の予測にについてもはっきりと書かれているので、そのはっきりした予測が今後も当たるかどうか興味深いところです。そういえば過去の著作でオバマ大統領が数年で辞めることになるとも書かれていたように記憶します。
本書は新書ということもあってややトーンダウンしていますが、著者の持ち味は歯に衣着せぬ物言いにもあります。著者に批判されている業界の方からすると、ややきつく感じられるかもしれません。
著者の書かれていることは、そう言い切ってしまわずにある程度はそのような要素があると言われると納得しやすいのですが、著者に言い切られると、言い切られた方は反論したくなるかもしれません。ただしその反論には、著者のさらなる強烈な反論が返ってきそうです。
金融商品については、本書で数多くの実例が挙げられているように、中途半端に関わってしまうと「騙され」やすくなってしまいます。本書は金融業界の批判をしている本として読まれやすいとは思いますが、著者が本当に言いたいことは一人一人がお金や経済について真剣に考えることの重要性なのかもしれません。