2010年05月19日
『2012年、世界恐慌 ソブリン・リスクの先を読む』
相沢 光悦/中沢 浩志著 2010年月5月30日発行 735円(税込)
2012年、世界恐慌 ソブリン・リスクの先を読む (朝日新書)
著者:相沢 幸悦/中沢 浩志
販売元:朝日新聞出版
発売日:2010-05-13
おすすめ度:
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簡潔に書かれており読みやすい本でした。朝日新書からは金融や経済関係のスマートな本がよく出ていると思います。
本書がこのタイミングで出たのは、最近のマーケットの状況を鑑みると非常にタイムリーです。本書を読むと、現在市場で起こっていること、これから起こりそうなことをコンパクトに理解することができると思います。本書の目次は以下の通りです。
- なぜリーマン・ショックは克服できたのか
- 世界のマネー爆弾 その1〜アメリカの闇
- 世界のマネー爆弾 その2〜ヨーロッパの憂鬱
- 世界のマネー爆弾 その3〜日本の脳天気
- 大恐慌との奇妙な類似
- 蓄積されたマグマは破裂する
全体のタイトルや章のタイトルからもわかるように、本書は今後の世界経済について悲観的な内容になっています。しばらく前までは二番底の怖れについて楽観的な雰囲気が市場に漂いはじめていましたが、本書の内容からすると本当の二番底はこれからということになりそうです。
本書に書かれていることを簡潔に述べると、ここ数年世界各国が金融危機を回避するために国債を大量に発行しましたが、そのために財政危機の可能性が高くなっているということになります。
世界的な財政危機の問題が顕在化するのはまだまだこれからであり、現在話題になっているギリシャを中心としたヨーロッパの問題は、その始まりに過ぎないのかもしれない・・・と本書を読むと思うかもしれません。
本書ではなぜ2012年なのか、なぜ財政危機が起こるのかという定量的な説得力はやや弱い部分があるように思いましたが、ことの性質は非常にわかりやすく書かれていると思います。
結局バブルのツケはどこかで払わないといけないわけですが、そのケジメのつけかたにはさまざまな可能性があり、その一つが本書で示唆されている「2012年、世界恐慌」のなのかもしれません。
本書には「世界恐慌」を回避するための提案も最後に少し書かれています。その提案はつまるところ、生産性や効率を高めつつツケを少しずつ払っていくことにより、マイルドな成長と世界各国の財政状態を両立させることです。
ツケを払わないといけないことはたしかですが、問題はどのようにそのツケを払っていくかです。あと1年と少しで「世界恐慌」が来るかどうかは何とも言えませんが、ツケを払い終わるメドが立つまでしばらくは不安定な状態が続くのかもしれません。