2010年06月14日
家業再生42
母も借金が嫌いです。
父は設備投資のために新たな借金することについては話にすらなりませんでした。それに対して、一応母とは借金についての話はできるものの、つねに気が進まない感じです。
現在は現場で中心となっているのは母なので、帰るたびに、あるいは電話などで家業についてのさまざまな話をよくしますが、いつも新たにお金を借りることで話がかみ合いません。
それまでも借金をして設備投資をすることの必要性を繰り返し話しましたが、母は消極的でした。ようやく半年くらい前に1000万円程度の借り入れができましたが、この借り入れは母が必ずしも借金について理解したからではありません。
母の頭の中では、借金というものは毎月いくら返済するかが借金ができるかどうかの根拠になっています。半年前の1000万円はその時に父が借りていた一つの借金の返済が終わったため、母はようやく数年前から自分が主張していた借金について同意てくれました。
母の頭の中では、月10万円の返済が終わるので、月10万円を新たに返済すればよいだけの借金ならばしてもよいという判断です。母にとって次に借金できるのは、これから半年後になっています。なぜならその時に以前からの返済の一部が終わるからです。
要はフローで借金をとらえているわけです。これは一般の人が住宅ローンを返済する時の感覚に似ています。気持ちとしてはわからないでもありません。しかしながら、ビジネスとして考えると借金を先延ばしするのは儲ける期間を損失しています。
母が実質的に経営の中心となってからすでに3年近く経過していますが、行うべき設備投資を始めるまで2年以上、そしてそれを終えるまでさらにこれから2年以上かけようとしています。
自分が月に何回か帰って自分で工事をしているのにはいくつか理由がありますが、借金ができない以上、なるべく設備投資のコストを下げないといけないということがあります。
結果的にはいろいろと勉強になるのでよいのですが、あまり要領がよいやり方ではないかもしれません。できれば3000万円程度のお金を借りて一気に設備を改善し、マーケティングや企画の作成などソフト的な面に集中した方が、時間的にも効率的にもよいはずです。
ビジネスを通じて母とお金の話をよくしましたが、いろいろと合理的でない面があります。そのあたりを指摘するとすぐには納得してくれません。時間をかけて繰り返し説明してようやく理解してくれたと思ったら、最後に最初と同じことを言われて力が抜けることもたびたびです。具体的な話はまた後日書きたいと思います。
話していて感じるのは、やはり根底に不安があるということです。父と話していると年配の男性を支配しているのは融通のなさ、母と話していると年配の女性を支配しているのは不安であることがよくわかります。
両親のことを悪く書くつもりはないのですが、うちの親に限らずこれは人間が一般的に年齢を重ねるにしたがって顕著になる傾向です。
今後ますます高齢化する日本においては、このあたりの心理的な問題を解決できるような社会制度を国として提供できるかどうかが一つのポイントかもしれません。現代の日本における雇用や年金の問題は、これらの人間の自然な心理と深い関係があるように思います。
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この記事へのコメント
>話していて感じるのは、やはり根底に不安があるということです。父と話していると年配の男性を支配しているのは融通のなさ、母と話していると年配の女性を支配しているのは不安であることがよくわかります。
私の父親もご多聞にもれず、ゴリゴリに凝り固まった思考の持ち主です。母親も自分の考えを変えられず、不安に支配されています。
自分の両親に対し、ロジカルに話していてもちっとも先に進まないので、これまでも幾度となくヤキモキすることがありました。
こういう人達にただ共感していても前に進まないので、私は「孫」という武器を上手に使って、無理矢理病院に検査に行かせたりしています。
世間ではにわかに、相続税の撤廃など議論されていますが、bestbookさんがおっしゃるように、人間の心理をついた方策が求められていると感じます。
国に対する信用が揺らいでいますし、なかなかそういう政策案が出にくい状況なのでしょうが…。
それはそれとして、家業再生シリーズの次のエントリーが待ち遠しいです!
あまり無理をなさらないように、ホドホドに頑張ってください。
ふむふむ こういう考えもあるのですか
>時間をかけて繰り返し説明してようやく理解してくれたと思ったら、最後に最初と同じことを言われて力が抜けることもたびたびです。
あははは
こう言うのよくありますよ 私の母も
僕は今ある新規事業を経営者の父親に提案しているのですが、話が噛み合わず結構キレています。
今回の解説でちょっと父の考え方が分かりました。
ありがとうございました。
御評価いただきありがとうございます。
人が加齢とともにもともとの特徴が強化されていくのは、自然現象で仕方のない面があると思います。
それらはすでに与えられたものとして、どのように対応していくかを考える方がよいのかもしれません。
お孫さんに協力してもらうのはよい方法ですね。参考になります。
家業再生の忙しい状態はしばらく続きそうなので、頻繁に更新はできなさそうですが、話自体は続くと思いますのでお読みいただければ幸いです。
>Yさん
借金についてはいろいろな考え方があると思いますが、金利は時間を先取りするコストとも考えられます。
このブログに書いている話は形は変わっても、実際どこの家庭でも大なり小なりある話ですね。今後日本全体が高齢化するにつれて、ますます顕著になるかもしれません。
>ぶだろさん
親と子、言い換えると年配者と若者は対立するのが実は望ましいあり方なのではないかと思います。
ぶだろさんが親御さんに立腹されても、考え方によってはうまくいっているとも言えるかもしれません。
現在の日本では若者全般の年配者に対する怒りのエネルギーのようなものが足りないと思います。ぶだろさんの場合は実はそれほど悪くない状態なのかもしれません。