2013年07月08日

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『ニュートレーダー×リッチトレーダー 株式投資の極上心得』5

ニュートレーダー×リッチトレーダー 株式投資の極上心得
ニュートレーダー×リッチトレーダー 株式投資の極上心得 [単行本]


アベノミクスによる日本の株式市場の盛り上がり応じて、最近は株式投資やトレード関連書籍の新刊を書店で目にするようになりました。

本書は対話形式の物語により、トレーディングのエッセンスがコンパクトにまとめられており、3つのチャプターに分かれています。

  1. 投資家心理
  2. リスク
  3. 投資手法
それぞれのチャプターはさらに再分類されており、「新米トレーダー」と「金持ちトレーダー」を対比させてタイトルがつけられています。たとえば、「新米トレーダーは自分が正しいのだとむきになって思い込む。金持ちトレーダーは間違ったとき、すぐに認める。」などです。章の終わりには、トレーディングについての定番ともいえる推薦図書も1冊ずつ紹介されています。

本書は主に心理面とリスク管理の基本について述べられています。投資手法についてのページが一番多いのですが、あまり具体性はありません。これは本の性質上仕方ないと思います。

読みやすい文体で書かれており、また分量も少ないこともあり、本書は短時間で読了できると思いますが、やはりそのエッセンスを身につけるのは容易ではないと思います。

これは恋愛本を読んでその内容を頭で理解できても、そう簡単には実践できないことと似ています。現実に直面すると、どちらも感情が揺れ動いてしまい、感情の動きが理性を圧倒するからです。多くの場合、現実の世界では理性は感情の奴隷です。 

やはり習熟するためには、現場で感情に翻弄されることにより、不安定な自己を客観視する粘り強い作業が必要です。 本や師はその作業のための道しるべとはなりますが、その作業を代行してくれるわけではありません。 本書ではあきらめないことや、粘り強さの重要性についても繰り返し述べられています。 

相場でよく言われる感情の動きとは、具体的には恐怖と欲望です。 恐怖と欲望については、多くの人はその役割を過大視しています。文明の発展していない原始時代においては、恐怖と欲望は自然界や原始的なヒトのコミュニティと調和した心の働きでしたが、死に至る危険や欠乏が減少した文明社会においては、心の安定を妨げる負の側面の方が強くなっています。

怖いことが実際に起こっても多くの場合さほど深刻な事態にはなりませんし、欲望を満たしたとしてもさほどの喜びは続きません。 

日常生活で恐怖や欲望を客観視しようとしても、それらは日常生活においては人間の原始的状態とどこか結びついているため、客観視しにくい面があります。

しかしながら、相場の世界においては結果がはっきりしており、日常生活でありがちな自分に対する言い訳がしにくいため、それらの感情を「純粋な」形で反省しやすく、粘り強ささえあれば自分の心の動きを客観視しやすいかもしれません。 

別に相場をすすめているわけではないのですが、自分の感情を見つめ直したい方には、トレーディングはお金を殖やす以外にも心を見つめ直す場として利用できるかもしれません。そのような時にも、本書は役に立つと思います。

investmentbooks at 00:26│Comments(0)TrackBack(0)clip!本--株式投資 

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家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
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