本--経営
2008年01月12日
『ブスの「力」』
石川 香著 2007年12月20日発行 1365円(税込)
著者は銀座のナンバーワンホステスから、現在は3店のクラブのオーナーママをされており、さらに他のビジネスも展開されているようです。
ホステスのセールスポイントとして、容姿が大きな比重を占める銀座の世界において、いかにして著者が弱点を乗り越えて、あるいはそれを逆用してホステスとしてナンバーワンになり、さらに繁盛店を3軒も創り上げたか、そのノウハウが詳しく述べられています。
続きを読む2007年12月31日
『経営論 改訂版』
宮内 義彦著 2007年12月1日発行 680円(税込)
オリックス会長兼CEOの宮内義彦氏の経営論です。6年半前に単行本として出版され、文庫化に当たり改訂されたものです。宮内氏といえば、規制緩和・民営化の旗印になっています。
本書は基本的には6年半前の本ですが、今でも古さを感じさせません。株主資本主義など、当時と比べて今ではすっかり広まった考え方が平易に説かれています。
続きを読む2007年12月16日
『小さな飲食店 黒字経営の原理原則100』
鬼頭 宏昌著 2007年12月15日発行 1890円(税込)
待望にしていた「小さな飲食店シリーズ」の3冊目の本です。前作の2冊とも素晴らしい本だったので、発売されたらすぐに読んで紹介しようと思っていたのですが、ブログ「マインドマップ的読書感想文」で早々と紹介されていたことにより発売を知りました。
「マインドマップ的読書感想文」は本ブログで折に触れて紹介している自己啓発、勉強法、仕事術関連の本に焦点を絞っておられ、いつも参考にさせていただいています。書き手のsmoothさんによると、本ブログとは「補完」関係にあるとのことです。
さて、本書についてですが、このブログでも著者の本は過去の2冊とも紹介させていただきました。とくに1冊目はブログを初めて2回目の記事で紹介したので、印象深い本です。以下の二つは過去の記事へのリンクです。
続きを読む2007年12月05日
2007年11月14日
『1年で黄金の会社を生み出すカラクリ』
坂田 薫著 2007年11月17日発行 1365円(税込)
1年で黄金の会社を生み出すカラクリ―企業再生屋さんがコッソリ教える
中小企業向けの財務と経営についての本です。中小企業向けということは、日本にあるほとんどの企業向けということになります。
著者は金融機関で1000社を超える企業の財務と経営改善計画に取り組まれたのち、現在は中小企業の再生をされているようです。「どうしたら僕たちはヒルズの住人になれるのだろうか?」というブログを書かれています。
日本の企業はほとんどが未上場の中小企業ですが、決算書や企業財務についての本は多くが大企業・上場企業の例を挙げて解説されています。実際に起業すると、「本で読んだのと違う!」ということになりかねません。そうなったときには、すでに身動きがとりにくくなっていることが多いようです。
そのような落とし穴に陥るのを防ぐためにも、本書は役立つ本です。中小企業の経営や財務について読みやすく、そしてわかりやすく明快に述べられています。中小企業のビジネスモデルと財務を有機的に解説されているのが、一番のウリのようです。
貸借対照表と損益計算書の図も一見普通なのですが、目に馴染みやすいというか、妙にわかりやすくなっています。 本書の財務面の解説から分かるのは、借金をして資産を増やさないこと、付加価値をつけて営業利益率を高めることがよいということです。
本書を読む方は、普段からビジネス書によく目を通されている方が多いと思います。ビジネス書を読む方はたくさん読みますし、読まない方は、中小企業の経営をしていたとしても、ほとんどと言っていいくらい読みません。
本書が最も役に立つのは、ほとんど本を読まない中小企業の社長さんだと思いますが、本を読まない方は本書のような良書に目を通すような機会を自分から求めることはないのでしょう。最も必要な人に行き渡らないという皮肉な状態が現状です。
自ら求めないことにはどうにもなりません。聖書ではありませんが、「求めよ、さらば与えられん」です。
2007年11月08日
『カリスマ・コンサルタントの稼ぐ超思考法』
岡本 史郎著 2007年11月14日発行 1365円(税込)
カリスマ・コンサルタントの稼ぐ超思考法 ~仕事と人生に効く「問題解決力」が身につく20の方法~
経営コンサルタント岡本史郎氏の最新作です。経営や経済の周辺領域を、関係のありそうなことから関係のなさそうなことまで話題にしていますが、いずれにしても間接的なヒントが得られるようになっています。
本書にあるような発想は、理想的には自分で本を読んだり人に会ったりして、その体験をもとに自分で思いつければよいと思いますが、トポロジー的に頭を柔らかくする必要があるので、難しい場合が多いようです。
本書には一見経営とは全く関係のない話題が元になっているものも多く含まれていますが、関係ないものであればあるほど有効に生かされたときに、他と差別化しやすいと思われます。
本書では20の「稼ぐ超思考法」が述べられているのですが、それらの思考法の一つとして「プリコラージュ」という概念が紹介されています。この概念については本書でも解説されていますが、構造人類学のレヴィ・ストロースが名付けたもので、他の分野から構造を借用することです。
本書のテーマは、この「プリコラージュ」であると思われます。
読書をするということは、さまざまな分野の構造を把握するという意味があるので、ビジネスにおいても潜在的な有用性があります。「潜在的」と書きましたが、本を読んでも構造を適用できることに気付かない場合があるからです。というかほとんどの場合気が付かないと思います。
本書は「プリコラージュ」について、著者による多くの具体例があります。具体例をヒントに自分で思いつくことができるようになると、本書を最も有効に生かせていると言えるでしょう。
個人的には、「ずれる」「ゆるむ」「こだわらない」などの心のあり方が、気付くためのキーワードであると思います。
2007年10月26日
『会社の品格』
小笹 芳央著 2007年9月30日発行 756円(税込)
『国家の品格』がベストセラーとなってから、「品格」という言葉は書籍のタイトルのキーワードになっています。そろそろ『〜の品格』の〜のところに入る言葉も打ち止めになりそうです。
本書のタイトルは『会社の品格』ですが、章ごとに「組織の品格」「上司の品格」「仕事に品格」「処遇の品格」となっており、会社だけではなく会社に関連することについての品格がテーマです。
著者は「モチベーションにフォーカスした企業変革コンサルティング」を行っているリンクアンドモチベーションという会社の社長をされている方です。
印象に残った以下の見出しを眺めるだけでも、ある程度の内容が想像できると思います。
- 社員こそ最大の投資家。選んでもらえない会社に未来はない
- 品格を保つには、社員をマーケティングせよ
- 権力に頼らず、金とポスト以外に報酬をいかに提供できるか
- 商品価値と人材価値のバランスが、仕事に品格に結びつく
- 人的資源に投資するスタンスが、会社の品格を表す
会社はまず人であるというメッセージが全体を貫いています。本書は、社員がいかにしてやりがいを持って働くことができる組織をつくるかということがメインテーマであると思います。タイトルの「品格」という言葉は、必ずしも使われる必然性はないと感じました。
全体的にきわめてもっともなことが時代の状況に即して書かれており、会社で働くすべての人々にとって、なんらかの仕事や組織改善についてのヒントがそれぞれ得られる本であると言えるでしょう。
2007年10月02日
『儲かる会社の社長の条件』
小山 昇/岡本 吏郎著 2007年10月10日発行 1470円(税込)
中小企業の経営についてはカリスマ的な存在であるお二人の対談です。対談といっても、一人一人の話がひとまとまりになって1〜2ページずつ交互に出てくる形式になっています。
自由に語り合われていますが、いろいろと示唆に富む話が出てきます。お二人に共通するのは、現実主義であることと柔軟さがあるところです。
それぞれのお話で役立ちそうな見出しを書きます。
小山氏
- 既存のものはいつか必ずダメになる
- 経営とはバランスを崩すことである
- 社長だけが勉強している会社はダメ
- 増収増益になっても経営の苦しさは変わらない
- ビジネスは最高に面白くてしびれる博打だ
- 社長の仕事は「決定」と社員教育
- 相手が気づくように誘導していくのがコツ
- 良いことは強制しなければ身に付かない
岡本氏
- 儲かる会社にしたいなら経営者は「楽」を知らない方がいい
- 「それしか選択肢がない」のは「決断」とは呼ばない
- 「事業を二倍、三倍にする」という考えがとても大事
- いいものは高くしないと売れないもの
- 社長にはどん底に落ちた経験が必要
- 資金は貸してくれるうちにできるだけ借りておく
- へそ曲がりの経営者しか儲けられない
- 変化できる人は世の中の二割しかいない
一般的な常識とは異なる話も多く出てきますが、刺激になります。興味を覚えた方は、それぞれの著者の単著を読まれるのをおすすめします。とくに岡本氏の税金や経営の本は参考になります。
本書のような話に多く接すると、考え方に柔軟性が出てきます。中小企業の多くの問題点は、経営者が時代に応じて考え方を変えられないことによります。人間なかなか変化するのが難しいことを思うと、中小企業の業績の回復が十分でないのは、人間の本性に根ざした非常に根の深い問題といえるでしょう。たんなる景気の問題ではありません。
2007年09月30日
『18歳からの経営学』
阪口 大和著 2007年9月30日発行 1470円(税込)
まだ画像がアップできませんが、5年前に発行された以下の本が改稿されたものです。最後の章は新たに付け加えられています。
この「痛快!〜」シリーズは大きめのなので、よく本屋に行かれる方は、実物を見るとピンと来ると思います。読み始めるまでこの本の改稿版であるということには気がつきませんでした。
5年前に出版されたときは、時代的に小泉元総理大臣による構造改革のまっただ中であり、本書もその影響が感じられる内容になっています。組織論についてかなりのページを割かれているのですが、なぜ日本の官僚組織がうまく機能しなくなったかなどについて詳しく述べられています。
本書にある、組織の暴走の4段階は以下の通りです。
- 慣性の法則・・・成功体験への埋没・前例主義
- 手段の目的化・・・目的を達成する手段そのものが目的になる
- 逆機能・・・本来の目的とは正反対の目的を追求する
- 自己遂行機能の喪失・・・組織本来の能力を失い、外部に仕事を委託するようになる
男女関係が破綻する過程にも似ているように思います。
組織論からめて、リーダーの条件については「同質性と異質性を兼ね備えた人物でなければならない」としています。リーダーが孤独なのは、異質性が必要とされるからです。組織の中では、必然的に少数派であることが必要とされます。場合によってはただ一人ということもあります。
何事でも新たな価値を創り出すものは、微妙なバランスの上に成り立っています。株式投資でも、少数派である必要がありますが、単なる少数派ではなく、しばらくすると多数派になる少数派でないといけません。芸術もしかりです。
他にもマーケティングや会計についても、初歩的なことがやさしく解説されていますが、本書の一番の読みどころは組織論であると思います。
わかる方にはわかると思いますが、本書は全体を通じて5年前のビジネス書業界の雰囲気が漂っています。新版のタイトルが示すように、初心者向けにやさしく書かれた本ですが、経営における組織論については非常に示唆に富んだ内容になっており、5年経った今も普遍性を保っています。
2007年09月28日
『会社法はこれでいいのか』
浜辺 陽一郎著 2007年9月10日発行 756円(税込)
企業法務専門の弁護士さんが、新会社法の問題点やメリットについて書かれた本です。法律的に細かいところまで書かれているところもありますが、問題点のおおざっぱに要点を述べると、
- 自由化・柔軟化・効率化の徹底→少数株主や株主総会の権限縮小
- 短時間で作成・成立→練り上げ不十分による将来的な諸問題の発生
- 尋常でない難解さ→専門家が限られる
- 株式会社の作りやすさによる株式会社の信用力の低下→自己責任の必要性
自由度が増すだけ、企業の自己判断力や自己責任が必要とされそうです。
よい点についても書かれていますが、自由度が増すため、コンプライアンスが充実させる必要性が高まるということです。短期的には、会社による差があるため、しっかりしていない会社が淘汰される過程においては、さまざまな問題が出てくることが予想されます。
新会社法の難解さに起因する参入障壁の高さにもかかわらず、企業の内部においてコンプライアンスを充実させる必要性が高まること、外部においてはM&Aが活発になることなどにより、企業法務を専門とする有能な弁護士さんの価値は高騰することが予想されます。
本書は内容の性質上、必ずしも面白く読めるというわけではありませんが、新しい会社法の問題点を概観するためには有用な本であると思います。
2007年09月24日
『経営者格差』
藤井 義彦著 2007年9月28日発行 735円(税込)
サブタイトルは、「会社がワーキングプアを助長する」です。著者は、カネボウに30年勤務された後、海外のビジネススクールに留学され、その後外資系企業で経営に携われた方です。
本書の内容は、トヨタ、ホンダ、京セラ、松下、GEなどの勝ち組企業の経営者の行動や考え方が主に書かれています。それらの事例と対比するように、著者ご自身が長年奉職されたカネボウの問題点について、著者の視点から書かれています。
タイトルから受ける印象と比べると、内容はオーソドックスで正論が多くなっており、勝ち組企業についての知識を得るためにはよいかもしれませんが、本書は他の本からの二次的な情報が多くなっています。
カネボウについての問題点も書かれており、それらについては一次的な内容ですが、やや悪く書かれすぎているかもしれません。企業の盛衰については、時代の流れや運の要素も大きく、企業の衰退が経営者の手腕だけによるものではないと思います。
タイトルと著者の経営者としての経歴や経験からの内容を期待すると、やや本書は物足りない点があると思いますが、勝ち組企業のエピソードや考え方を知るためであれば、ある程度の参考になると思います。
2007年09月21日
『M&A時代の企業防衛術』
津田 倫男著 2007年9月30日発行 735円(税込)
著者は20年にわたり国際的にM&Aのアドバイザリー業務に関与されていた方です。本書では、最近の国内外の事例を取りあげながら、M&AとくにMBO(マネジメント・バイアウト)について解説されています。タイトルからは、やや内容が分かりにくい点があります。
今年の5月に我が国で外資に対して三角合併が解禁されました。いざ解禁されてみると、今のところは、意外にたいしたことはない印象ですが、著者はこれから国内外の企業による買収攻勢が活発になると予想されています。
経営陣が中心となって株式を取得するMBOについては、市場から株式を買い取って非上場化する場合と、親会社などから株式を譲り受けて独立する「暖簾分け」のパターンがありますが、いずれにしろ経営者が経営について独立性を安定させるために行う場合が多いようです。
非上場化の場合は、究極の買収防衛策といわれます。M&Aが活発になると、企業が上場していることの本質的な意味が問い直されるため、上場を維持するかどうかについての問題意識が生じるであろうと思われます。その結果として、非上場化が一つの答えであるということはじゅうぶんに考えられるため、今後はMBOも選択肢として利用されるようになるでしょう。
株主の立場からすると、ある程度の価格で株を引き取ってもらわないと、納得できない点があります。本書にも実例がありましたが、MBOの前に業績を下方修正して買い取り価格が下がるようなことがあると、株主としては裏切られたように感じても不思議ではありません。
システムが大きく変化するときは、過去の問題点が噴出しながら徐々に変わっていくので、今後もM&Aがらみではさまざまな問題が出てくることでしょう。問題が起こらないと、改善は難しいことが多いため、長期的には問題が出ることもよいのかもしれません。
2007年09月10日
『「正義の経営」で10倍儲ける方法』
五十棲 剛史著 2007年9月10日発行 1470円(税込)
著者は船井総研の有名コンサルタントです。長年の経験と豊富な事例をもとに、これからの時代の起業の在り方について、具体的に述べられています。
「正義の経営」とあります。これからは、社会的な正義に則った経営を行わないと、長い目で見た企業の業績は述べないということです。古代ギリシャでは、真・善・美は一致すると言われましたが、さらにこれからの企業経営では利益も一致するというのが、本書の主張です。
ロハス(LOHAS=Lifestyles Of Health And Sustainability)についても、企業の在り方として、かなりのページを割いて書かれています。ロハスでビジネスを行う場合のポイントは、売る方が本当の意味でロハスを理解していないと、顧客の方にそれを見破られてしまうということです。個人の価値観がビジネスに大きな影響を与えるため、経営者がふだんからどのような価値観に基づいて生活を送っているかが重視される時代になりました。
長期的視点に立った経営をインベストメント型経営として、以下の五つのタブーを挙げています。
- 無理な集客はしない
- 商品・サービスの質を落とさない
- 人材採用は妥協しない
- 成果給を導入しない
- 利益が出そうでも安易な節税に走らない
長期的な視点で企業の価値を創り上げる必要があるということです。老舗などを例に出しています。商売の本質は、創り出した価値を金銭と交換するということですが、問題はその価値が何かということです。時代や場所によって人の価値観が異なるため、いろいろと変化します。商売で成功するためには、人々の価値観を知る必要があります。本書では、これからの時代に重視される価値を提案する本です。
2007年09月05日
『ハーバードMBA留学記』
岩瀬 大輔著 2006年11月20日発行 1890円(税込)
現在は更新されていませんが、著者が2年間にわたりup-to-dateで書き続けていた、ブログ「ハーバード留学記」が書籍化されたものです。留学の体験を中心に、アメリカ資本主義について随筆風に書かれています。
ブログの内容がほぼそのまま本になっているため、やや冗長な感じはしますが、内容や文章にみずみずしさを感じます。本書の最後で、業界で著名な投資家が著者の起業に投資する話が出てきますが、本書を読むと、投資家が著者に投資したくなる気持ちもよく理解できます。現在は、ネット生保を立ち上げ中とのことで、それについてのブログが日々更新されています。
最近はMBA関連の本も数多く出されており、知識の点では必ずしもハーバードに留学する必要はないかもしれませんが、本書を読んで、留学には以下のようなメリットがあるように思いました。
- 人的コネクションの形成
- 意欲の向上
- 意識の変革
人的コネクションの向上については、世界中から将来のグローバルビジネスにおける幹部候補生が集まっています。2年間勉学をともにすれば、多くの人と深いつながりができ、同じ釜の飯を食った仲間となるので、世界的にビジネスを展開する上で有利になるでしょう。
意欲の向上とは、さまざまな刺激を受けてやる気が出るということがまずあります。それに加えて、本書にあるように、留学費用は2千万円かかります。2年間働かない機会損失を加えると、1億円くらいのロスがあると思いますが、それだけの投資をすると、何とかしてそれを生かしたいという大きな動機づけとなると思います。そのような観点からは、会社から学費と給料を出してもらいながら留学するよりも、自費で行く方が望ましいでしょう。
意識の変革については、周囲の人や卒業生に成功したビジネスパーソンが多いため、そのような人たちと一緒にいると、自分と大きな違いがないということに気付き、自分も同じようになれるのではないかと思えるようになるということです。人は自分で自分の限界を知らないうちに設定していたりするので、留学することにより、その限界が自然となくなるかもしれません。
上記の3つは、ビジネスの成功に必要とされる大きな要素ではないかと思います。知識面よりも、これらのものを自然と得ることができることに、米国の一流校への留学の意味があると言えるでしょう。
2007年08月29日
『利益を3倍にするたった5つの方法』
大久保 恒夫著 2007年9月4日発行 1365円(税込)
利益を3倍にするたった5つの方法―儲かる会社が実践している!
著者は、イトーヨーカ堂、ユニクロ、ドラッグイレブンなどの経営・業務改革に携わり、それぞれの企業の業績を大きく改善された方です。今年の1月からは、成城石井の社長をされています。
本書は、著者の経歴から分かるように、主に小売業の経営・業務の改善方法について書かれていますが、ビジネス全般に通じる基本的かつ重要な考え方も学べます。ビジネスに限らず、人生論・仕事論としても読めます。
本書は、商売の王道とでもいうべき内容であり、全体に良書独特のよい雰囲気が漂っています。本書のタイトルにある5つの方法が前書きにあり、内容全体の簡潔な要約となっています。
- 経営と現場が一体となってお客様の満足を実現する
- 仕事を通して現場の人を成長させる
- 重要なことに絞り込んですぐやる
- 売れる商品を価格を下げないで売り込む
- 今までのやり方をやめて、構造的に改革する
本文では、それぞれがさらに合計で49の項目分けて詳しく説明されています。
とくに印象に残ったのは、何かをやって状況を変化させないといけない時に、いくつかの選択肢があって、どれを選ぶかなかなか決まらない場合、さいころを振ってでも決めてとりあえず実行した方がよいということです。どうせ考えても分からないのだから、とりあえずやってみて、うまくいかなかったとしても、そこから何かを得ればよいようです。
本書は、商売ですぐに用いることができる、現場に即した知恵の宝庫です。仕事全般に役に立つことが書かれていますが、ものを売っている方には、とくに得るところが大きい本です。
2007年08月26日
『繁盛道場』
中島 武著 2007年8月24日発行 1470円(税込)
繁盛道場―愛されるお店をつくる二十二の法則
著者は際(きわ)コーポレーションの設立者であり社長でもある方です。際コーポレーションと聞いてもピンとこない方もいらっしゃると思いますが(自分もそうでした)、鉄板餃子で知られる中華料理チェーン店の「紅虎餃子房」の名前でお分かりになる方も多いと思います。
本書を読んで始めて知りましたが、際コーポレーションは「紅虎餃子房」以外にもさまざまな形態の飲食店を展開しています。最近は京都で旅館も経営しているということです。
本書では、著者の飲食店経営についての哲学や実践のノウハウが書かれています。全部で22条あります。そのうち、印象に残ったものをいくつか書きます。
- トレンドと「飽き」は表裏一体
- アンケートでお客様の心理はつかめない
- 「ひとこと」でわかるブランドをつくれ
- 「日本一」を目指さない店は、百番にもなれない
- つねに店を再生させよ
食事を提供するということにはサービスの原点があるため、現場に携わってこられた方のものを読むと、得るものが多くあります。食欲は人間の三大欲求の一つだからです。
三大欲求の残りの二つは、睡眠欲と性欲ですが、それぞれ宿泊業と風俗業が対応します。宿泊業と風俗業のサービスや経営の本についても、数多く参考になる本が出されています。これらの欲求を満たす業界は、ヒトが生物である限り、無くなることはないと思います。
三つのうち、飲食業界が最も参入の障壁が低いと思いますが、それだけに競争が厳しいようです。その厳しい業界で満足度の高いサービスを提供されている方の書かれたものには、とくに学ぶべきところが多くあります。その業界のことのみならず、根本的な精神はサービス業全般に通じるものがあります。
2007年08月01日
『会社は頭から腐る』
冨山 和彦著 2007年7月26日 1575円(税込)
著者は産業再生機構の元COOです。本書では、著者の長年の経営コンサルティングや産業再生機構での経験を元にして、企業や経営のあり方について熱く語られています。
タイトルからも分かるように、経営において、頭で考えることに偏りすぎることについて警鐘を鳴らしています。本書は一言でまとめると、企業経営における非合理性について合理的に述べられた本であると思います。
日本企業の強さについては現場にあるということですが、著者によると、経営力についてはまだまだだそうです。著者は本書を「経営医学序説」とされています。企業の病理、経営者の病理を「経営現場の臨床医」として見つめ、格闘されたとのことです。
精神科の病気において、治療が難しい場合の理由の一つに自分が病気であるという「病識」がないということがありますが、企業の再生も同様のようです。問題がある企業の多くは、経営者自身に企業が病気であるという自覚がありません。
やはりポイントは柔軟性であるように思います。善いことにしろ悪いことにしろ、いずれにおいても柔軟性がないと回復しにくいと思います。何となく調子がおかしいということは、人にしても会社にしても、どこか修正すべき点があるというサインなのですが、気づきを得て自主的に改善する決心が付くまで苦しい状態が続きます。
人も企業も本質的に内部に矛盾を抱えています。本書にもあるように、楽な方向に流されず、矛盾を矛盾として受け入れることが大切なようです。
2007年07月20日
『結局「仕組み」を作った人が勝っている』
荒濱 一/高橋 学著 2007年7月30日 1000円(税込)
結局「仕組み」を作った人が勝っている (Kobunsha Paperbacks Business 7)
光文社ペーパーバックスBusinessの最新刊です。内容はタイトルからもある程度想像がつきますが、自分がほとんど働かなくても自動的にお金が入ってくる「仕組み」を作り上げた成功者達へのインタビューがまとめられています。
一番多く紹介されているのはインターネットビジネスですが、その他にも情報起業、ビジネスオーナー、投資、発明などに分類されています。インターネットの活用は多くの事例において重要な役割を演じています。
紹介されている方々は、その業界では有名な方々です。最後にまとめとして具体的なやり方を簡単に紹介されており、心構えも述べられています。心構えについては、多くの人にとって、いろいろと乗り越えなければならないところがあり、成功するかどうかはそこにかかっているようです。
本書で紹介されている多くの事例は、本屋でよくビジネス書に目を通している方にとっては、初めての内容ではないと思います。
「働かずに〜」などと書かれていると、楽して儲かるように思えますが、これは結果の部分だけを見ていることになります。そうなるまでにいろいろとハードルがあります。そろばんの達人を見ると、全く努力をせずにほとんど自動的に難しい暗算をしていますが、そうなるまでには長年の努力があります。
成功事例はいろいろとありますが、努力せずにその成功事例と同じことができるようになっているときには、その事例からはあまり利益が得られなくなっていることが多いように思います。
本書はあくまで「例」であるので、全く同じことをしても同じような利益は得られないことでしょう。将来の成功事例はまだ本には書かれていません。参考になるのは、あくまでも心構えです。
2007年06月26日
『なぜか「また行きたくなる」飲食店のつくり方』
大久保 一彦著 2007年7月6日 1260円(税込)
過去にブログで紹介させていただいた著者の方々の本が新しく出版されると、どうしても書店で自然に目が向かってしまいます。本書の著者の本は、最近別の本を紹介したばかりですが、あまり日をおかず新刊が出版されました。
著者は飲食店のコンサルタントをされています。いままでにも関連の著作が数多くあります。本書では、飲食店の経営における集客方法についても書かれていますが、さらに「店が継続すること」がメインテーマとなっています。
SEOが流行っているせいか、最近はいかに集客をするかという本がたくさん出版されています。一時的に数多く集客したとしても、本当に飽きがこない価値のあるものを提供し続けなければ、商売は長くは続きません。モテることと結婚生活が続くこととが別であることと同じです。
新規の顧客を開拓することと、固定客にリピートしてもらうことは車の両輪のごとく、どちらも重要です。ビジネスの性質にもよると思いますが、一般的にはリピーターをつくることがより重要であると思います。
本書でも今までの本と同様に、飲食店についての著者の現場における経験やコンサルタントとしての知恵が数多く述べられています。印象に残った見出しをいくつか書くと、
- 「なんか良さそう」を演出すれば目の前の通行人はお客になる
- ゆったりした第一印象が繰り返し来店を誘う
- 競合店の調査はやめる
- なにをしたらいいか悩んだら、目の前に見える人を喜ばせよ
- 「おいしい」と感じる言葉を使う商品は続かない
- お客さんを飽きさせないために店自らの進化が大切
- 飽きない店は「〜を食べた」ではなく「その店に行った」と思わせる
- なぜその店がいいのかは自分自身が持つ文化(価値観)が決める
- お客さんに貸しを作れ
見出しだけを書きましたが、本書では詳しく具体的に述べられています。飲食店の経営は、魅力的を高めて選んでもらうという点で、異性とのつきあいに通じるものがあります。
本書を読んでいると、著者の飲食店経営に対する愛情を感じることができます。やはり、好きなことを仕事にする方がよいようです。
2007年06月06日
『行列ができる店はどこが違うのか』
大久保 一彦著 2007年6月10日 680円(税抜き)
ちくま新書の最新刊です。本書の画像はまだアマゾンでアップされていません。著者は飲食店チェーン店を数社転職後、「とんかつ新宿さぼてん」を多店舗化されたそうです。現在はフードコンサルタントをされています。
「さぼてん」では以前に、何回かトンカツを食べたことがあります。本書で、お客さんが薬を飲む時に、そのことを察して氷の入っていない水を用意するという話が出てきますが、食事をした時に、まさにそのサービスが目の前で展開されていました。
とんかつ弁当のデリカの店舗でもたまに、揚げ物の弁当を買うことがあるのですが、注文したものが売り切れてさらに待ち時間が長い時などは、味噌汁をつけてくれたりして、やはりサービスが充実していました。隅々の店舗まで浸透している、しっかりとしたノウハウが存在したということが、本書を読んでさらによくわかりました。
本書では、最初に人の行動の9割が無意識になされているということをテーマにして、具体的な戦略が語られます。自分が何かを買う時に、どうして意思決定をしたのか常に意識しておくと、商売のヒントにもなるように思います。
常識にこだわらないことの重要性についても書かれています。このことは、最近のビジネス書でよく出てくる話で、最近のビジネスのメインテーマといってよいほどです。以前の日本では、経済発展の大きな流れにいかに乗るかが勝負の分かれ目でしたが、最近は自分で小さな流れを作るために、いかに他との差を作り出すかがポイントになっているようです。
アルバイトなどの社員の教育方法についても具体的に書かれています。以前、「さぼてん」に入った時、「胡麻のすり方、ご存知ですか」と本書に書かれているように聞かれました。本書によると、これは常連客かどうかを見分けるための方法として使われているようです。
この本は具体的に面白く書かれていますが、自分が実際に何回か入った店についての再発見があったので、楽しめたということもありました。また「さぼてん」で食事をする機会があったら、現場を見てさらに楽しめると思います。
本書は主に飲食店の経営について書かれていますが、心構えや接客の方法など、他の業界の方が読まれても大いに得るところがあるでしょう。新書本だけに、値段もお手頃です。
2007年05月30日
『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』
島田 紳助著 2007年5月30日発行 700円(税抜き)
ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する―絶対に失敗しないビジネス経営哲学
タレントとして知られる島田紳助さんのビジネス論です。本業の傍ら25年も前から、飲食店を中心としてさまざまなビジネスを展開しています。本書は、今までの経験に基づき、ビジネスのオーナーとしての視点から書かれています。
少し前に以下の本を読んだのですが、内容がやや軽めでしたので、紹介しませんでした。今回、本人の本が出たので、一緒に書いておきます。
島田紳助はなぜ好きな事をして数十億円も稼ぐのか―蓄財術は島田紳助に学べ!
本書のサブタイトルに「絶対に失敗しない〜」とありますが、ややオーバーな表現である印象を受けます。参考になったことをいくつか書きます。
- 常識はずれを合理的に考える
人と違うことをしないと成功はできませんが、根底には合理的な精神が必要であるいうことです。合理的であるからこそ、常識はずれにも見えるそうです。たしかに、成功している中小企業の社長さんは変わった人が多いような印象があります。
- 顧客満足度を上げるために従業員満足度を上げる
働いている人たちが楽しそうな店は流行るということです。店に行くのは商品やサービスだけでなく、働いている人の楽しさを分けてもらうために行くということもあるからでしょう。子供に楽しく過ごしてもらうためには、奥さんに楽しく過ごしてもらう必要があることと似ています。ある会社で社内恋愛を積極的に推奨したところ、業績が爆発的に伸びた話などが紹介されています。
- どれだけ興味を持てるかが成功のカギ
ふだんの生活でビジネスにどれくらい興味を持てるかということです。著者は、自分が行く店で、売り上げとか利益率とかを直接訊くことなどもあるそうです。ご本人のキャラクターを存分に生かしています。なかなか普通こうはできないと思いますが、直接訊けない場合でも、飲食店などに入って、価格、店内の客数、滞在時間、客単価などを想像して、おおざっぱな売り上げなどを考えることはできます。売り上げのみならず、接客態度、ディスプレイ、照明、物の配置、メニューの構成などなど、いくらでも観察するポイントはあるように思います。経営者はこのような観察を楽しめる人が多いかもしれません。
- 新しいビジネスを始めるなら素人と組む
経験者だと、いままでの業界の常識にこだわって、なかなか新しいことができないことが多いようです。たしかに爆発的に成功した企業は、業界に詳しくない人が参入した場合が多いように思います。
- お金は確かに便利なものである
相田みつおさんの言葉を引用しています。「人生お金がすべてじゃないけれど、あれば便利、ないと不便。便利なほうがいいなあ。」その上で、お金は人生の目的ともならない、あくまで道具であると書いています。
- お客さんの本心に思いを巡せる
お客さんが表面上は満足したような事を言っていても、本当は満足していないかもしれないということです。医療業界では、とくに注意が必要かもしれません。
本書は、タレント本というより、一人のビジネスオーナーによる経営哲学の本として参考になる本です。
2007年05月27日
『カッコ悪く起業した人が成功する』
鈴木 健介著 2007年5月30日発行 1000円(税込)
カッコ悪く起業した人が成功する Get Far with Guts
光文社ペーパーバックスBusinessの最新刊です。
著者はサラリーマンを経て、1985年に貿易会社を起業、タバコの代理販売などもされて、一時はかなり成功されていたようですが、2001年に倒産・破産を経験されています。その後、ふたたびコンサルタント会社を起業されています。過去の著作に『破産からの再起』があります。
本書も著者の起業、経営、倒産などの経験から得られた、現場での知恵が「やってはいけないこと」、「やるべきこと」に分けられて述べられています。
成功本は失敗を恐れないことやその必要性について書かれていることが多いのですが、失敗の内容そのものについては、陰の部分なので、なかなか具体的に述べられていることはありません。
一般的に失敗の原因は、成功の原因と比べてはっきりしていることが多く、先人の経験から多くを学べるように思います。成功については、多くのことを試しているうちにあることが偶然ヒットしますが、失敗についてはその時は経験不足でわからないのですが、後から考えると必然のことが多いようです。
成功のために失敗は必要であるとは思うのですが、地雷の場所がわかっていれば、あらかじめ避けるに越したことはありません。いくら避けても、失敗はするときは失敗すると思うので、避けられる失敗は避けたほうがよいでしょう。
著者は最終的には倒産に至っていますが、起業、経営、営業、人材のマネジメントでの成功体験もあります。本書は失敗本ですが、失敗と成功は表裏一体であるため、成功本としても読めます。著者は営業や宣伝に優れているようで、それらの部分の記述がとくに参考になりました。
2007年05月13日
『ビジネスの“常識”を疑え!』
遠藤 功著 2007年5月2日発行 800円(税抜き)
著者は早稲田大学ビジネススクール教授であり、コンサルティングファームであるローランド・ベルガー日本法人会長でもあります。過去に、『見える化』、『現場力を鍛える』、『ねばちっこい経営』などの著作があり、それぞれ売れていたようです。
本書の内容はタイトルの通りで、ビジネスの特徴を、多面性、進化性、非再現性の3つにまとめています。これら3つの特徴があるため、過去の常識にとらわれていてはならないということになります。違う書き方ですが、以前紹介した木村剛氏の『頭が良い人は親指が太い』においても、本質的には同じことが言われています。
本書では、戦略、マーケティング、オペレーション、人材活用、マネジメントの5つの観点から全部で60の具体例が挙げられています。5つの観点のうち、印象に残ったものをそれぞれ一つずつ書くと、
- 敵対的買収は悪?
- 少子化で子供市場は縮小する?
- 非効率では儲からない?
- これからは転職でキャリアアップすべきである?
- 株式の持ち合いはよくない?
などがあります。最近よく言われていることについて、敢えて反対の視点から書かれているように感じるところもありますが、視点を変えると参考になることがあります。将棋のプロが、盤面を相手の方から見ることがあるのも、同じようなものかもしれません。
本書の最後に、常識の罠に陥らないための、5つのポイントが述べられています。
- 貪欲に勉強して、まずは常識を学ぶ
- 学んだ知識をベースにして、自分の頭で「考える」「判断する」ことを常に意識する
- 「二次、三次情報」ではなく、自分の五感で集めた「一次情報」を大切にする
- データは「事実の一部」にすぎないと認識する
- 自分の「主観」を最重視する
重要なのは、自分で判断するということですが、忘れてはならないのが、まずは常識を学ぶということです。将棋でも、「定跡は習って忘れよ」という格言があります。上達するには、まずは定跡を覚える必要があります。常識となるということは、過去にそれなりに根拠や有用性があったということです。
ビジネスにおいては、「よく見ると価値があるにもかかわらず人がほとんどいない場所」に自分を置き、人々が価値に気付いてわっと押し寄せるところから利益が生まれます。常識になっているところは、すでにたくさんの人が押し寄せたところです。そこではほとんど利幅は取れません。本質的に株式投資と同じです。
2007年05月09日
『小さな飲食店真実の店長バイブル』
鬼頭 宏昌著 2007年4月15日発行 1800円(税抜き)
小さな飲食店真実の店長バイブル―集客と人材マネジメントの新常識
このブログを始めた頃に著者の1冊目の本を、「この本が埋もれてしまうのは惜しい」と思って、紹介しました。ちなみに以下の本です。
小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡
本書は著者の2冊目の著作となります。1冊目の本も良書でしたが、本書も素晴らしい内容でした。1冊目の本は、外食業界の経営の話でしたが、本書は店長の仕事や役割について書かれています。より現場に即した内容です。
タイトルに「飲食店」とあるので、業界の方以外は、特別の関心がない限り、本書は手に取ることがないかもしれません。しかしながら、本書は飲食店と関係のない方でも、得るところが多い本です。何かを売る方、市場価値を高めたい方、人のマネジメントに興味のある方ならば、役に立つと思います。
年商4000万円程度の商売をされている方なら、本書を読んで、実際の現場に取り入れると、年商が1割くらいはアップするのではないかと思います。あくまで想像ですが。もしも、1割アップすると、400万円アップです。原価を3割とすると、粗利益が280万円アップし、固定費はほとんど変わらない場合が多いと思うので、そのまま利益のアップに繋がります。
本書は1890円ですが、利益が280万円アップすると考えると、本を読む時間、現場で実践するコストなどを無視した場合、異常な投資効率の良さです。というより、逆に本を読んで勉強しないことのコストは極めて高くつくのかもしれません。
本書は良書ですが、その理由として、著者に関して、
- 懸命に実践した
- さまざまな勉強をした
- 自己の内省を重ねた
- すでに引退しており、出し惜しみが少ない
- 本を書く動機が世の中の役に立つこと
- 文章が読みやすい
ということがあるからです。
タイトルに「飲食店」とあるため、読者の市場規模を狭くしているところが惜しいところです。私の予想では、著者が今後より一般向けの本を書き続けた場合、どこかでブレイクするのではないかと思います。
過去のベストセラーを思い出すと、いままで限られた世界の読者を対象に専門的な内容の良書を書いて、ヒットをコツコツ飛ばしていた方が、一般読者に読まれそうな本を書いた時、爆発的に売れることがあります。『バカの壁』などが浮かびます。
2007年04月23日
『頭が良い人は親指が太い』
木村 剛著 2007年4月25日発行 1700円(税抜き)
頭が良い人は親指が太い―デキるビジネスマンなら知っている10の法則
著者の木村剛氏は、竹中元大臣の金融再生プログラムで有名な方です。『最新版 投資戦略の発想法』などの著作でも知られています。
本書は、ビジネス、とくに経営者として成功するための10の法則が書かれた本で、著者が起業と経営で苦労された経験がもとになっています。タイトルは、ビジネスにおいては、「頭が良い」ことは「親指が太い」ということと同じくらいの意味しかないという話に拠っています。
本書による「ビジネスで成功するための10の法則」は以下の通りです。
- ビジネスの本質は失敗することだ
- 良いものが売れるというのはウソ
- 顧客調査でヒットは生まれません
- 確実なビジネスは確実に失敗する
- 工夫に工夫を重ねて途方に暮れろ
- 金儲けだけでビジネスはできない
- 知識を増やすよりも勇気を鍛えよ
- 夢に命を賭ければ勘は働き始める
- お客様は自分で創り上げるもの
- 人を動かすことは戦略より難しい
上記の内容について、著者の体験に基づき一つずつ丁寧に解説されています。参考までに、女性を口説くことに喩えてみます。
- 女性を口説くときは失敗を恐れるな
- 自分がこうしたらよいと思っても女性が必ずしもよいとは思わない
- 女性に好きなタイプをたずねても意味がないことが多い
- 台本通り口説いてもうまくいかない
- 工夫に工夫を重ねて途方に暮れろ(そのままです)
- 金だけでは女性は口説けない
- 口説きのテクニックよりも勇気を鍛えよ
- 女性に命を賭ければ勘は働き始める
- 出逢いは自分で創り上げるもの
- 女性を動かすことは戦略より難しい
知識だけでなく、自分自身の存在を賭けないといけないということが共通しています。
本書においてとりわけ強調されているのが、「頭の良い人」や「学校秀才」はビジネスでの成功は難しいということです。このことは、おそらく著者の木村氏が十分に勉強された人であったからでしょう。
本書を読んで、ビジネスで成功するためには、勉強はしない方がよいと誤解してしまう人がいるかもしれません。たしかに勉強だけでは成功できないと思いますが、勉強しないとなおさら成功できないと思います。女性を口説くときも、知識はあるに越したことはないでしょう。
ビジネスの上で、経営、マーケティング、会計、税務、対人スキルなどの知識もあるに越したことはないと思います。問題なのは、知識にこだわることや、知識があることによる過度のプライドなどです。これも同じですね。
2007年04月19日
『なぜあの人は会社を辞めても食べていけるのか?』
藤井 孝一著 2007年4月30日発行 1400円(税抜き)
「週末起業」で有名な藤井孝一さんの本です。本書では、起業の具体的なノウハウよりも、起業家にとって必要な心構えがテーマになっています。
本書では、起業するための力を大きく、「稼ぎ力」、「人間力」、「お金力」、「時間力」、「継続力」に分け、さらにそれらを細分化しています。最初に見開き2ページでわかりやすくまとめた図があります。
起業するとは、一言で述べると、「自分の人生を主体的に生きる」ということであるようです。著者は必ずしもそうするべきであるとは主張していません。主体的に生きるのがしんどい人もいますし(というか、ほとんどの人がそうかもしれません)、そもそも雇われる人がいないと経営する方も困ってしまいます。
いくら起業がブームになったとしても、起業する人は全体の一部です。たとえ本書が100万部売れたとしても、買っているのは日本人の100人に1人弱です。その中でさらに実際に起業する人は、10人に1人もいないのではないでしょうか。
起業しないにしても、今後の日本社会では、主体的な人生を送らない人は経済的に苦しくなる可能性が高くなることでしょう。経済的な大変さが、主体的になるきっかけになるのかもしれません。苦しみや不安を乗り越えて主体的に成長したい人には開かれた時代です。
2007年03月10日
『国税調査官は見た「なぜ あの社長の会社は儲かるのか」』
大村 大次郎著 2007年3月5日発行 1143円(税抜き)
著者は10年間国税局に勤務され、法人税担当調査官をされていました。退職後、税務調査、節税などについての本を、もと調査官としての体験をまじえて、数多く書かれています。ライブドアショックについても、独自の視点から分析された本(『ライブドアショック・謎と陰謀―元国税調査官が暴く国策捜査の内幕』)も書かれており、面白く読めました。
本書は、国税局の調査官として税務調査を行って数多くの会社や社長を見てきた経験に基づき、どのような会社や社長が伸びるかということについて書かれています。
伸びている会社の社長は
- 税金を含め、数字に強い
- 妻が控えめである
- 真面目すぎてはダメ
- 学歴は必要ない
などであるようです。社長は奇人のような人が多いとのことですが、ただひとつ奇人と異なるのは「合理的な精神を持っている」ということであるようです。「合理的な精神」とは、問題点を認識し、修正し、確実に進歩することであるとのことです。
また、伸びている会社については
- 雰囲気がよくなる仕組みを持っている
- すぐに対応する
などとのことです。
その他、伸びる会社の内部事情、危ない会社と安全な会社、企業の条件などについて書かれています。文章も読みやすく、著者の得意分野である節税についても簡単に書かれていますが、節税の具体的なところについてはあまり詳しくないため、著者の本であれば、別の著作を参考にした方がよいと思います。
やはり、会社の経営については、税金を含め、お金の流れの把握は重要なようです。とくに中小企業については(日本のほとんどの会社がそうですが)、社長自らがお金の流れを把握することが、企業経営には欠かせないようです。
節税ができないということは、お金のコントロールがうまくできないということなので、自然にお金もよりうまくコントロールしてくれるところにに移動してしまうのでしょう。お金を集めたいのであれば、お金をうまくコントロールする知恵が必要なようです。
2006年12月19日
『小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡』
鬼頭 宏昌著 2006年11月30日発行 1890円
小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡
オビによると、著者は25歳で「ずぶの素人」の時に父親から居酒屋2店舗、総菜店1店舗の赤字会社を全面的に任されたそうです。その後6年で20店舗・年商20億円の外食チェーン店に育て、事業を売却。飲食業界からは引退されたとのことです。
すごいですね。
現在は「経営請負人」としてコンサルティング事業をされているようです。→ホームページ
この本のすばらしいところは、著者が外食事業そのものからは引退しているため、ノウハウの出し惜しみしていないところです。ミクロの視点、マクロの視点、経営に対する心構えなど、そつなく実践された体験が読みやすい文章で書かれています。すべてをそつなく行えると(それがなかなか難しいのですが)、必然的に成功に結びつく、そんな思いを抱かせてくれる本です。
題名だけからすると、飲食店関係の人のみを対象にしている本のように思われますが、商売に関係する人すべてにとって役立つ内容です。これからは、雇われ人も経営者としての視点に立てるかどうかというところで差がつく時代になると思われるため、すべての人に役立つ内容かもしれません。
内容の充実はもちろんのこと、読みやすさもあり誰が読んでも面白くてためになる良書だと思うのですが、タイトルが内容の良さを十分にアピールできていないかもしれません。
この本がこのまま埋もれてしまうのは惜しい
と思ったので、2冊目として紹介させてもらいました。