2007年02月10日
『ヘッジホッグ』
バートン・ビッグス著 望月 衛訳
2007年1月19日発行 2500円(税抜き)
昨日9日ニューヨーク証券取引所にはじめてヘッジファンドが上場しました。野村も出資しているようです。今日はヘッジファンドに関係した本です。
タイトル、サブタイトル、装丁、オビいずれにおいても今ひとつですが、内容は非常にすばらしい本です。タイトルの「ヘッジホッグ」はハリネズミのことです。アメリカの金融業界の一部では、ヘッジファンドやそこで働く人をそう呼ぶそうで、タイトルの由来になっています。
サブタイトルの「アブない金融錬金術師たち」はおそらく、本書の訳者である望月衛さんが訳されてよく売れた『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』から来ているのではないかと推測します。オビもややセンセーショナルな印象です。
本書の作者であるバートン・ビッグスは、アメリカの名門投資銀行モルガン・スタンレーの運用部門にパートナーとして30年間勤務、ストラテジストとしても活躍し、その後自身のヘッジファンド「トラクシス・パートナーズ」を立ち上げています。ポートフォリオなどはこちらで見られます。
また、著者のWikipediaの項目がありますが、その中にmistakeという部分があります。最近はここまで書かれてしまうんですね。参考になりますが、厳しいです。バートン・ビッグスの投資判断にしたがって損をした人が追加したのでしょうか。ちなみにmistakeの3つについては簡単に書くと
- 中国が2年間の下落相場直前に強気であった
- ペソが暴落する前にメキシコに強気であった
- 原油価格の上昇がわからなかった
最後の原油価格の上昇については、本書に詳しく書かれています。
本書は著者の長年の投資業界における経験、さまざまな投資家との交流、膨大な読書量、自身のヘッジファンドの運用経験により書かれています。ファンダメンタルはいうまでもなく、心理的な側面、テクニカルについても深く考察されています。著者には文学的な素養もあるようで、読み物としても非常に面白く読めます。投資に興味がある方にとっては知的刺激にあふれている内容です。
いままで読んだ投資関係の書物でベスト3に入ります。株式投資に本格的に取り組んでいる方におすすめです。内容の良さを、タイトル、装丁などが伝え切れておらず非常に惜しいと思います。でも、この本は長年のあいだ名著として読み継がれると思います。
ヘッジファンドというと、実態がよくわからないためか、相場を攪乱するなどのあまりよいイメージがないかもしれません。本書を読むとよくわかるのですが、運用するヘッジファンドの内側からすると厳しい世界のようです。
日本の市場についても、外側からの視点で書かれており、参考になることが多いです。今後は、格差が拡大することにより、日本においてもヘッジファンドへの投資が増えることになるのではないかと思います。