2007年08月13日
『中国の不思議な資本主義』
東 一眞著 2007年6月10日 777円(税込)
著者は読売新聞の経済部記者で、昨年まで数年間北京にて特派員をされていた方です。本書では、現地での体験を踏まえて、中国経済について政治や社会の仕組みをもとに、中国経済の特徴を分析されています。
著者は中国の資本主義を「ヘデラ型資本主義」と名付けています。「ヘデラ」とは聞き慣れない言葉ですが、ツル性植物の一種で、以下のような中国経済の特徴を喩えるために用いられている言葉です。
- 人的なネットワークによる取引関係の優先
- ネットワーク内部での権力換金システムの横行
- ネットワークの堆積体としての「社会全体」にまとまりはなく、規範がきわめて希薄
- 職業倫理に乏しく、あらゆる業種で投機性が高く、短期的利益を優先する
- 企業は永続性よりも、短期にどの程度利益を上げるかを指標にする
そして、次のような副次的な特徴を持つとしています。
- ネットワークごとに他国、他の社会へ浸透する能力が高い
- 社会全体の不利益を引き起こしやすいため、社会を安定的に構成する力が弱い
国家として安定しにくく、常に不安定要素があるということのようです。
官僚の構造的な腐敗についても詳しく分析されています。また、中国経済を「殺到する経済」とも捉えており、「景気過熱→デフレ」のサイクルが生じやすいとしています。
中国経済に関しては、そのエネルギーの強さを重視するか、無秩序さを重視するかで、将来の展望について楽観的になるか悲観的になるかに分かれると思いますが、本書は後者の立場で、無秩序さに記述の重点が置かれています。
それにしても、現在の共産党政権はよくやっていると思います。官僚は優秀で現実的な問題処理能力のある人材が集まっているのでしょう。
本書のような本を読むと、中国株には極端に割安なときしか投資をする気が起きなくなります。少なくとも現在の株価ではとうてい投資できません。