2007年09月08日
『始めよう。瞑想』
宝彩 有菜著 2007年8月20日発行 620円(税込)
始めよう。瞑想―15分でできるココロとアタマのストレッチ (知恵の森文庫)
書き下ろしの文庫本です。瞑想の本ですが、このブログでは瞑想を勧めるために紹介しているわけではありません。
本書は瞑想の本ですが、著者は宗教色を排してなるべく科学的な視点から書こうとされているようです。瞑想の具体的なやり方、効果・効用について書かれています。効果については、以下の8つで、「脳が劇的にバージョンアップする」そうです。
- 理解力がアップする
- 集中力がアップする
- 記憶力がアップする
- 判断力がアップする
- 洞察力がアップする
- 発想力が豊かになる
- 企画力がアップする
- 交渉力がアップする
効用については、以下の9つで、「心と体のメンテナンス」ができるそうです。
- 悩みが減る
- ストレスに強くなる
- 優しくなる
- 嬉しくなる
- よく笑う朗らかな性格になる
- クヨクヨしなくなる
- イライラしなくなる
- 健康になる
- 熟睡できる
瞑想を、脳の機能や、幸せになるための感度を上げるための手段として捉えています。
ここでは何が言いたいかというと、いくら社会的に成功してお金や名誉を得たとしても、それらによって幸福感が得られなければ、多大な労力をかけてそれらを得る意味はあまりないということです。最終的には、幸せになるための感受性が発達していなければ、幸福感は得られません。逆に、お金や名誉がほとんどなくても、日々幸福感を感じている人はいるでしょう。
何事も不足している状態が満たされたら一時的な満足感を感じます。空腹感を考えてみると分かります。おなかがすいていると何を食べても美味しい。でも、おなかがいっぱいになった状態で、食べ物がいくらあってもそれ以上満たされません。空腹な状態から満たされた状態になるときの満足感が大きいので、食べ物自体が幸福を与えてくれると錯覚してしまいがちです。異性についても、同じように言えます。
お金や名誉も同じです。不足している状態がつらいので、あればあるほど幸せになると錯覚してしまいます。年収200万円の人が、5倍の1000万円になったらかなり楽になるでしょう。その過程では幸せな感じがするかもしれません。ところが、1000万円が同じ5倍の5000万円になったとしても、同じくらい幸せになれるかどうかは疑問です。
お金や名誉が食物よりもタチが悪いのは、どれくらいあれば満たされたのかはっきりと分からないことです。満腹感ほど満たされた感覚がはっきりしていません。いくらあっても、他と比較したりして、完全には満たされないことがあります。漠然と満たされない思いがあるため、今よりもたくさんあれば満たされるのではないかと思って、いつまでもより多くを求め続けますが、むしろ持てば持つほど欠乏感が強くなることがあります。喉が渇いたときに塩水を飲むようなものです。
そのように考えると、最も重要なのは、足るを知り幸せを感じる力ということになります。別に瞑想を勧めているわけではありませんが、自分の外部にお金や名誉などの何らかのものを求める場合、それと同時に自分自身の幸せの感受性を高める必要があるいうことです。瞑想はそのための一手段なのでしょう。
ある程度のものはあった方がよいと思いますが、ある程度を越えると、幸福感を感じるための要素は、内面的なものが大きな割合を占めるようになります。