2007年10月12日
『年収崩壊』
森永 卓郎著 2007年10月30日発行 798円(税込)
年収崩壊―格差時代に生き残るための「お金サバイバル術」 (角川SSC新書 10)
昨日に引き続き、創刊された角川SSC新書の一冊です。著者は有名な森永卓郎氏です。さまざまな雑誌などに掲載された文章がまとめられています。
テーマは今までの著作にもあるように、日本社会で格差が今後さらに拡大することを前提に、いかにして対処するかについて、年金、資産運用、趣味などについて書かれています。
年金については、具体的な数字について書かれているところが参考になります。電話代などの節約方法についても細かく書かれています。
全体的に、お金を持ってもあまり幸せにはなれないという論調が目立ちます。格差社会で負けることを前提に書かれているように読めるのですが、本書自体が格差社会に対する不満のガス抜きの役割を果たしており、皮肉なことに格差社会を固定する働きがあるように思います。
金持ちが税制上優遇されている例として、株式の配当の税率が1割と低いことが挙げられていましたが、これについてはやや異論があります。
配当は企業の税引き後当期純利益から払われますが、この段階ではすでに法人税が4割程度引かれています。株を所有している意味は企業の利益全体にあるので、配当の税金だけについて議論しても不十分です。
企業は法人税を払っているため、二重課税にならないためにも、株式の配当については税金を掛けなくてもよいのではないかと思います。ただでさえ、日本の法人税は国際比較上は決して低くはありません。
配当の課税を強化するのであれば法人税を下げるべきですが、一番すっきりするのは配当については無税とすることでしょう。


