2008年01月15日
『大人の投資入門』
北村 慶著 2008年1月29日発行 1365円(税込)
大人の投資入門―真剣に将来を考える人だけに教える「自力年金運用法」
日本人の金融リテラシーを高める金融・投資関係の本を、読みやすい文体で過去にも書かれている北村慶氏の新作です。本書のテーマは「自力年金運用法」です。
まずは日本の公的年金についての解説があります。日本の公的年金の積立金のポートフォリオについても解説されていますが、ポートフォリオは以下の通りです。
- 国内債券 67%
- 国内株式 11%
- 外国債券 8%
- 外国株式 9%
- 短期資産 5%
他の国々の公的年金がどのように運用されているかについても、本書で一覧表表にまとめられていますが、諸外国と比較しての我が国の特徴は、国内債券の割合が多いことです。不動産への投資がないことも特徴です。
株式の割合が低いため、諸外国に比べてパフォーマンスが低くなっています。運用方法については、2010年には見直されるようですが、年金の運用は年金問題の改善のためにも重要なテーマです。数パーセントの運用年率の違いで、数兆円〜数十兆円規模の違いが出てきます。そう考えると、国の知的資源をもう少し年金の運用に割り当ててもよいのではないでしょうか。
本書では「私的年金」を創って運用することをテーマにしていますが、その理由は二つあります。一つ目は公的年金だけでは現在の若い世代の老後資金が不足するため自分で補う必要があること、二つ目は公的年金のポートフォリオが偏っているため自分でバランスを取る必要があることです。
本書で最も参考になったのは、公的年金と自分の資産運用を一体として考えるという見方です。そのような観点から、現時点では、著者は私的年金を株式中心に運用することを勧めています。株式は国内株式、外国株式に分散し、ETFなどのパッシブ運用がよいということです。
資金をどのように使いするかについては、基本的には月々一定金額を投資するドルコスト平均法を勧めています。手数料の高い投信などは勧めていません。年に一回程のリバランスを行います。
著者の方法をシンプルにまとめると、定期的に定額を外国と日本の株半々に投資し、年に一回リバランスを行うということになります。
この方法はシンプルなのですが、長期的にはパワフルな方法だと思います。なぜこの方法がパワフルなのかということを理解するのは重要です。方法も価値があるのですが、それよりも本書を読む意味は、なぜ本書の方法がよいのかということを理解することにあります。
理屈を理解しておくと、将来日本の公的年金の運用方法が変更になった場合でも、自分で私的年金のアセットアロケーションを行うことができます。本書は長期資産運用の大原則を学ぶ上で、有用な本であると思います。