2008年02月03日
『なぜあの人は、5時帰りで年収が10倍になったのか?』
ジーン 中園著 2008年1月31日発行 1470円(税込)
なぜあの人は、5時帰りで年収が10倍になったのか?―成功者だけが知っている、時間とお金の極意
著者は食品コンサルタントであり、日本マクドナルドの創業者藤田田氏のブレーンとして活躍されたそうです。現在はオーストラリアで仕事をされているようです。
本書は「逆立ちして」書かれたそうです。著者が日本とオーストラリアでビジネスを展開するなかで、実際に体験を通して役立ったことがまとめられています。
主な内容は、人生における心構え、時間管理術、お金に対する考え方、日常生活の心得、人間関係、ものの考え方などです。全体的に統一された書かれ方はしておらず、コラムの集合のような内容になっているので、細切れに読みやすくなっています。
内容的には自己啓発書なのですが、他の本からの引用ではなく、おそらく著者が自分の体験によって会得されたことが書かれているので、直接話を聴いているような印象を受ける本です。
本書のような自己啓発書について、池田信夫氏のブログで、このブログでも紹介した勝間和代氏の『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』を通して興味深い議論が展開されています。勝間氏ご自身も登場されています。
本ブログでも数多くの自己啓発書を紹介しているので、少し意見を書かせてもらいます。ちなみに、池田氏の書かれている本はすべて、勝間氏の書かれている本はほとんど読んでいます。
本にはそれぞれ役割があり、想定する読者も異なります。池田氏の本は8合目から頂上付近の人、勝間氏の本は裾野から7合目あたりまでの人を対象にした本です。
池田氏の批判は、勝間氏の本は知的生産といいながら頂上での議論がなされていないということだと思うのですが、本の性質に違いがあります。池田氏の本は頂上付近からさらに高みを目指して認識を深めるべく議論が展開されている本ですが、勝間氏の本は多くの人の知的活動を底上げをする本です。裾野に近いほど対象となる人が多く、本として売れやすいので、ベストセラーになりやすい構造があります。
頂上からさらに高みを目指すのは時代を進歩させるためにも必要ですが、全体の底上げも必要ですし、また同じくらい重要なことです。
勝間氏の本は誰でもマネができる内容ではありません。実際に読まれた方が少しでも参考にできれば、いきなり頂上に行けるというわけではありませんが、少しでも山を登る助けにはなる内容です。
現在の日本に必要なことの一つは、ホワイトカラーの生産性の底上げを図ることだと思いますが、勝間氏の本はその点からすると非常によくできている本ですし、時代のニーズにも応えているのでしょう。
頂上付近では池田氏が書かれているように、「自分の頭で徹底的に考えること」が必要ですが、そこに到達するまでには「ハウツー本」も一定の役割を果たしていると思います。