2008年02月13日
『老いはじめた中国』
藤村 幸義著 2008年2月27日発行 790円(税込)
著者は大学の先生ですが、もともとは日経新聞の北京支局長もされてたことがあり、「中国の改革開放政策の進展と課題を一貫して追及してきた」方です。
タイトルは中国の少子高齢化がすでに始まりつつあるというところから来ていますが、それだけでなく中国についての諸問題をまんべんなく取り扱っています。
取り扱われている問題としては、少子高齢化、農村と都市の格差、教育問題、戸籍問題、環境問題、株式市場、不動産市場、外資優遇策の撤廃、国内消費、民主化、土地の私有制、資源問題、食糧問題など多岐にわたります。新書版で幅広い問題が解説されているため、一つ一つの話題はコンパクトにまとまっています。
中国に関心のある方であれば、話題としてはどこかで聞いた話が多いのですが、著者が自ら訪中して仕入れた情報もあります。
これらの諸問題ですが、経済が発展していることの裏返しですので、必然的に生じているとも言えます。数多くの問題のうちで、少子高齢化が本書のタイトルとなっているのは、それ自体は本質的に一番解決しにくい問題であるからです。
食の問題など最近日本でも大きな話題になりましたが、本書にもあるように、中国国内では以前から大きな問題でした。日本で問題になるのは時間の問題であったといえるでしょう。問題としては、解決が困難とは言えないと思います。時間が経てば徐々に解決するのではないでしょうか。
本書の著者は、少子高齢化があるため、中国経済の長期的な発展については悲観的です。以前に紹介したジム・ロジャーズの『A Bull in China』とは対照的な見方です。
若い人の経済成長をしたいという欲望と、高齢者のお金をなるべく使いたくないという不安のどちらかが勝つかですが、日本ではある程度身の回りの欲望が満たされた段階で高齢化社会となったので、高齢者の不安が勝っているようです。
中国では、高齢化が始まってもまだまだ社会全体の経済成長への欲求が強いので、日本と同様になるかどうかは何とも言えません。ただし、これからの中国について考える上で、人口動態への注視は必要であるということを本書は考えさせてくれます。