2008年02月15日
『はじめての課長の教科書』
酒井 穣著 2008年2月15日発行 1575円(税込)
著者はオランダで知財の管理やベンチャー企業の経営をされている方です。オランダでの活動の様子などは著者のブログNED-WLTで詳しく伝えられています。
本書は発売されてまだ1〜2日しか経っていないのですが、すでにアマゾンで売上ランキング一桁になっています。理由としては発売以前から「404 Blog Not Found」で先行書評されていたということもありますが、何よりも内容が充実しているからでしょう。
本書のタイトルは「はじめて課長になる人のための教科書」という意味がありますが、その他に「課長になる人のためにはじめて出版された教科書」というニュアンスもあるように思います。
本書は5つの章よりなります。
- 課長とは何か?
- 課長の8つの基本スキル
- 課長が巻き込まれる3つの非合理的なゲーム
- 避けることができない9つの問題
- 課長のキャリア戦略
著者が前書きで書かれているように、末端社員向けの本や経営者向けの本は数多く出ていますが、課長のような中間管理職向けの本はほとんどありません。
最近は日本でも経営者と従業員はより分離される傾向にあり、そのため両者は対立的になりつつあります。それだからこそ、両者の中間に位置する課長という存在がより重要になってきているのかもしれません。課長は経営サイドの一番下であり、現場の一番上であるため、両者の橋渡しの役割を担うことを必要とされています。
これからの時代において重要性が高くなるにもかかわらず、課長という立場に焦点を当てた本はほとんどないため、本書の潜在的な必要性は非常に高いと思います。本書は時代のニーズを満たしていると思われ、また内容も充実しているため、おそらく売れることでしょう。
本書の根底に流れているのは、組織における人間心理への深い配慮です。著者が「心の病」についてまでも言及されていることからも、そのことがわかります。
組織における人に対しての配慮は生産性を上げ、効率を良くし、コストを下げる作用があります。本書は課長という役職を通じてそのことも語られていると思います。
本書は課長についての本ということになっています。課長は経営者的な要素、従業員的な要素を持っているということですが、実は会社に属するすべての人は、程度の違いがあるというだけで、末端の従業員から経営者に至るまで、両方の要素を持っています。そのように考えると、本書は課長周辺の人のみならず、会社という組織に属するすべての人が読者になりうる本です。
終わりの方に「ビジネス書を読んで学ぶ」というテーマについても書かれており、ふだんビジネス書を紹介させていただいているため、参考になるところが数多くありました。良書を探すためによいのは「立ち読み」であるというところなどは全くの同意見です。
著者のブログは以前より読ませていただいたのですが、ただ者ではないという印象を抱いていました。本書の出版により、その印象が正しかったことが証明されたように思います。
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この記事へのコメント
おっしゃるとおり、課長を「中間的な立場にある人」と読めば、意外と本書がターゲットにできる読者の範囲は広いのかなと感じました。
また、遊びにきます。今後とも、よろしくお願い致します。
想像していた以上によい本だったので、調子に乗ってちょっと失礼な表現になってしまったかもしれません。
御著書がどれくらい売上を伸ばすのか楽しみにしています。今後ともよろしくお願いいたします。



