2008年02月27日
『洗脳支配』
苫米地英人著 2008年3月1日発行 1365円(税込)
苫米地氏と言えば洗脳がキーワードであり、いままでにも数多くの洗脳についての著作があります。洗脳がテーマということは過去の本に同じですが、本書は今までとは趣向が異なり、社会と経済について洗脳の視点から分析されています。
要点としては、表に出てこない「支配者」が一般の人々を洗脳的に支配して、今あるような社会構造を維持しているということであり、読む人によっては、本書を巷によくある陰謀論の本として片づけてしまうかもしれません。
本書に書かれているような「支配者」が存在するかどうかということについては、結論的なことはなんとも言えません。どちらかというと、人がどのように物事を認識するかということに関わってきます。
「支配者」が存在するかどうかという問題は、ある特定の個人が存在するかどうかという問題と似ています。
例えば、友人のAさんがいるとしましょう。はたしてそのAさんが存在しているとはどういうことか?Aさんの心があるとはどういうことでしょうか?この問題は、Aさんが存在するかどうかというより、他者の心の存在をどのように捉えるかという問題です。
人の心を分解して考えると、その人の存在についてよく分からなくなってきます。全体として認識したとき、はじめて「存在」していると思うことができます。全体が一つの存在としてあると思ったらありますし、一つとして見えなければありません。
「支配者」についても、いると思えばいるように思えてきます。本書を読んでいると、いると思えてくるかもしれませんが、それはもともとあったものが見えてきたというより、著者の思考過程を追うことによって、いると思えてくる要素が強いかもしれません。
マネー経済について解説されていますが、もともとお金というものは思い込みによって成り立っているので、著者のように洗脳を軸に据えた認識論的な分析とは相性がよいように思います。そのような点で、本書は一般の経済書と比べると、一味でなく二味くらいは違った面白さがあります。
以前も著者の本を読んで思ったのですが、前書きの最初の部分が軽い混乱を起こしやすいような書かれ方をしています。これもテクニックなのでしょうが、内容が優れているので、内容だけで勝負をしてもよいのではないかと思ってしまいます。
また著者の本は根っこに仏教的な香りが感じられ、人の思い込みや執着を無くしたいという気持ちは感じます。著者の本には、一般的な思い込みを無くすという働きはありますが、それと同時に著者の世界観に少しばかり引き込まれるような感覚もあります。



