2008年04月19日
『ランチは儲からない 飲み放題は儲かる』
江間 正和著 2008年4月7日発行 1470円(税込)
ランチは儲からない飲み放題は儲かる―飲食店の「不思議な算数」 (セオリーブックス)
著者は数年の銀行マン生活を経て、ダイニングバー「ミールーム」を開業、その後は飲食店のプロデューサー、コンサルタントとしても活躍されている方です。本書は、著者のメルマガ「東京未来倶楽部通信」に書かれたものがもとになっています。
飲食店の経営の話が主な内容ですが、メルマガがもとになっているため、読み切りの話が多く、飲食を経営するのであれば気になるテーマが幅広く話題になっています。
本書の特徴として、数字の話が比較的細かく述べられているということがあります。ビジネスとして飲食店経営をするのであれば、数字を細かく把握しておくのは欠かせないことですが、飲食店経営は敷居が低いためか、開業前に細かい計算をしない方も少なくないようです。
飲食店を経営されている方には常識かもしれませんが、本書によると、売り上げの内訳が
- 材料費 30%
- 人件費 30%
- 家賃・管理費 10%
- 光熱費・消耗品費・雑費 10%
- 償却 10%
- 利益 10%
など明快に書かれています。実際にはいくらかばらつきはあるでしょうが、おおざっぱな相場を知っておくのは役に立ちます。
経営者として成功するのであれば、数字を細かく把握しておくことは欠かせません。お金が回っていれば何とか事業が続きますが、知らないうちに損をしているはずであり、長年積み重なると大きなものになります。
本書は飲食店経営に携わっている方、飲食店を開業したいと考えている方にはもちろん役立つ内容ですが、飲食店で雇われている方が読んでも経営者の考え方がわかるのでよいでしょう。雇い主に有益な提案ができると重宝されるかもしれません。
また、ほとんどすべての人は飲食店のお客さんですが、客の立場で読んでも飲食店の内情がわかるので、飲食店を訪れるときに見方が違ってくるでしょう。材料費が30%ということがわかっていれば、1000円の定食はおおざっぱに300円の食材で作っており、300円が人件費に充てられ、100円がオーナーの取り分ということが分かります。このあたりを面白いかと思えるかどうかも、経営に向いているかどうかの分かれ目かもしれません。
店がお客さんの立場に立つということは、いうまでもなく大事なことですが、客の方が店の立場の視点から眺めるのも意味があることです。店の立場に立つためには、自分で経営するのが一番ですが、経営しないまでもある程度のことは本を読んで想像力を働かせると把握できます。
お店とお客さんの関係に限らず、相対する一方になった場合はもう一方の立場に立つことは、相手の立場を通じて自分についての理解を深めることになります。
従業員であれば経営者の視点で、生徒であれば先生の視点で、男であれば女の視点でそれぞれ眺めることができると、相手方に重宝されることでしょう。この3つの例は原理的に相手の立場に立つことが難しいものですが、それだけにそれができる方は他の人々から際立ち、理解した相手方から「モテる」ことでしょう。