2008年05月22日
『月光! マネー学』
田村 正之著 2008年5月20日発行 1575円(税込)
ファイナンシャルプランニングの本ですが、タイトルがしゃれていて目を惹きます。タイトルにある「月」は冷静さの象徴で、本書の内容も冷静な資産運用によるマネーの取り扱い方についてです。
著者は日経新聞社の方で、日経マネーの副編集長などもされていたようです。そのためか、図表などの本の作りがわかりやすくなっています。「月光ルール」として、全部で91のマネーのルールがまとめられています。
資産運用については、インデックスを中心とした国内外の株式や債券などへのバランスのある分散投資が勧められています。ファンドやETFの固有名詞も挙げられており、実用性があります。
資産の大部分をパッシブ運用することを提案されていますが、アクティブ運用についても「月光進化形」としてまとまった解説があり、信用評価損益率など実践的なことがらについても触れられています。また、重要なポイントである税金のことについても、わかりやすく述べられています。
買うべきでない金融商品、医療を中心とした保険、年金などについて、原理を踏まえながら細かく述べられています。とくに医療保険の部分に突っ込んだ記載があります。
本書の全体を通じてのテーマは「いかに損をしないか」ですが、損をしないことは大切です。なぜなら、現在の資産運用の世界では、損をしないようにすると自然に得をするようになっているからです。多くの人が損をしているため、自分が損をしなければ、その損の一部が自分にまわってきます。
本書を読むと、資産運用において損をしない考え方や知識が身に付きますが、多くの人がそのようになると、損をする人が少なくなるため、得もできなくなることでしょう。そのあたりがジレンマです。
結局のところ、お金は知識がない人からある人にお金が流れるようになっています。本書はその知識の差をなくそうという本ですが、知識の差がなくなるとお金の流れもなくなってしまいます。しかしながら、いくらよい本が出たとしても、現実の世界においては知識の差がなくなることはないでしょう。
資産運用は複利の世界なので、資産運用が重要になればなるほど貧富の差が生じるのは避けられないようです。本書もそうですが、良質なマネー本が出るたびにそのことを思ってしまいます。
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この記事へのコメント
ただ、何だか装丁で損しちゃってる気がしないでもなく(汗)。
もっとも、ウチでご紹介しても、説得力がないのが悲しいデス(涙)。
本書はポイントが押さえられて充実していると思いますが、タイトルと装丁が特徴的です。
資産形成に興味がある本書の中心的な読者層の40代、50代の方は、「月光」というと「月光仮面」が浮かぶのかもしれません。
タイトル・装丁ともchallengingですが、著者が本書の出版元である日経新聞社の方なので、ある程度の冒険的なリスクも取れるのではないかと想像してしまいました。



