2008年06月10日
『洗脳 〜スピリチュアルの妄言と精神防衛テクニック~〜』
苫米地 英人著 2008年6月20日発行 1470円(税込)
苫米地英人氏の新作です。5年近く前に出版されている『洗脳護身術』をわかりやすくして、さらに最近のスピリチュアルブームについて分析し警鐘を鳴らす内容になっています。
内容については今までに出ている著者の本に書かれていることがほとんどなので、著者の本を今までにいくつか読まれている方には物足りないところもあるかもしれません。
洗脳や脱洗脳についても実用的なテクニックが簡明に書かれていますが、その世界では一般的なことです。深いテクニックについては危険性が大きいため述べられていません。
本書には二つの働きがあります。洗脳の技術を理解して利用すること、洗脳の技術を理解して洗脳から身を守ることです。もちろん著者は後者の目的で書かれています。
しかしながら、前者の目的で利用しようとする人もいることでしょう。本書のみでは不十分ですが、本書をきっかけにして興味を持つことにより自分で洗脳について悪用してしまう人もいるかもしれません。洗脳の技術はパワフルなので善悪どちらの目的に使うにしても大きな作用があります。
本書のテーマの一つはカルトからの脱洗脳です。宗教を題材にして書かれているのですが、著者が本当に言いたいのは世の中に存在するあらゆる価値観から自由になることについてです。
宗教のドグマから自由になることをテーマとされているため、一見反宗教的な内容にも思えますが、後書きにも書かれているように「本当の意味での宗教的行動」が本書の真のテーマであり、実は本書は宗教的な内容です。
仏教のもともとの教えはすべての束縛から自由になることでした。本書のテーマと同じです。著者がしようとしているのは、本来の仏教の教えを現代的に説くことなのでしょう。