2008年06月17日
『年収が10倍アップする 超金持ち脳の作り方』
苫米地 英人著 2008年7月1日発行 1365円(税込)
苫米地氏の本は『洗脳』を数日前に紹介したばかりですが、本書も同じ時期に出たので日をあけずに紹介することになります。アマゾンで見ると近日中にさらに新刊が出るようです。
本書は装丁、タイトルともにかなり売ることを意識して作られているように思います。タイトルには「年収10倍アップ」「金持ち」「脳」などの最近売れ筋のキーワードがちりばめられています。
苫米地氏の本は装丁や前書きに工夫がされており、そのあたりも興味深く眺めることができます。数日前の『洗脳』は洗脳という文字が表紙からページをめくるごとに徐々に小さくなり、本に引き込ませる効果がありました。
本書については、目立つ装丁とキャッチーなタイトルに惹かれて手にとって前書きを読むと、多くの人にとって否定しにくい話が始まり、内容に引き込まれるようになっています。
『本書を読めば、無限のお金を手に入れることができます!』と前書きに書かれており、以後の内容が気にならないほどお金に対する執着心から自由な人はほとんどいないと思います。
著者の主張によると、現代はバーチャルな情報空間が肥大しており、その世界で生成されるマネーの比率が大きくなっているので、情報空間をコントロールすると好きなだけお金を手に入れることができるということです。
難しく書かれていますが、わかりやすい言葉に翻訳すると、多くの人の共感を得て巻き込むことができる事業計画を立ててなるべくたくさんのお金を集め、レバレッジをかけて勝負するということです。資本主義そのものですね。
お金持ちになった人は昔からやっていることですが、最近はバーチャルな世界が肥大してその世界がマネーと直接関係しているため、大勝負がしやすくなっているのかもしれません。
ただし、この方法は著者が書かれているほど簡単ではないかもしれません。多くの人を巻き込める事業計画を練り上げることができる高度な能力が要求されますが、この仕組みを知っておくことは重要です。
本書でちょっと疑問だったのは、銀行の信用創造の考え方についてです。銀行はわずかな資本から信用創造で多くのマネーを作り出すことができるので、どんどんお金を借りてそのお金で失敗しても、最初からは存在しない信用創造で創り出したお金なので銀行にとってはあまり問題でないと書かれています。
たとえば、銀行のもともとの資本が1000億円、信用創造で創り出したお金が9000億円としましょう。ここから事業のために300億円借りたとします。事業に失敗して300億円すべて銀行に返済できなくなりました。
著者の考えでは、信用創造で9000億円マネーを創り出しているので300億円貸し倒れになっても銀行にとっては問題ないという主張です。
たしかに9000億円のマネーを創り出していますが、300億円貸し倒れになった場合は300億円分の自己資本が毀損します。自己資本が1000億円のままで傷つかず、信用創造で創り出した9000億円の方が減少するわけではありません。
銀行のうまみは、普通なら自己資本1000億円で1兆円の資産を運用するために9000億円の借金が必要なところを、9000億円分信用創造で創り出すことができることです。借金せずにレバレッジをかけることができます。
銀行以外であれば払うべき9000億円分の利息を払う必要がないこと、返済の必要がないことがうまみですが、決して無限に損失可能なお金を創り出すことができるわけではありません。利息のコストなしにハイレバレッジをかけることができるだけで、やはり損をすると自己資本が毀損することは他の事業と同様です。
ちょっと気になる点を書きましたが、本書は資本主義の本質に詳しくない方や著者の本を読んだことがない方には、刺激的な内容でしょう。目からウロコが落ちる方もいるかもしれません。
著者の目的はお金儲けの構造を提示した上で、お金儲けの虚しさを伝えることにあります。欲望の多くは未知のものに対する満たされるまでの漠然とした期待にあることを考えると、著者のスタイルには納得できる点が多いと思います。
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この記事へのコメント
装丁だけ見て、てっきりフォレストさんだと思ったワタクシ(汗)。←うっかりモノ
自分も読み終わるまでは、てっきりフォレストさんの本だと思っていました。宝島社の本でしたね。
週刊東洋経済拝読しました。エピソード興味深かったです。