2008年08月12日
『僕が不動産ビジネスであたり前だと思うことについて』
松岡 哲也著 2008年7月29日発行 1365円(税込)
版元は幻冬舎メディアコンサルティングなので、本書は企業のPRも兼ねていると思われます。著者は昨年名古屋証券取引所のセントレックスに上場した日本商業開発株式会社の社長をされている方です。
本書は著者がご自身のさまざまな体験を織り交ぜながら、不動産ビジネスについて思いのまま語ったエッセイ集です。160ページとちょっとの本で、そのうちの25ページくらいが写真なっているので気軽に読むことができます。
エッセイの内容はどのようにして不動産の価値を創り、高め、そしてその価値を守り続けていくかということを軸にして、著者のビジネスやブランドに対する思い入れが語られています。
おそらくヨーロッパの風景と思われる写真もエッセイの内容を盛り上げています。量としては少ないのですが、不動産ビジネスに対する長年の思いと現場での経験がないと書くことができない内容です。
上場企業に関係した本を読むと、どうしてもその会社の決算書や株価が気になるので、ホームページのIRと株価を眺めてみましたが、ここ最近の不動産市況の冷え込みにより、業績や株価は会社にとってつらい時期となっているようです。
本書を読むと、著者の空間作りを意識した不動産の見方にはセンスのよさが感じられます。本の印象からもそのことがよく伝わってきます。いくつか印象に残った見出しを書きます。
- 天井の高いは七難隠す
- 迷路のある建物では、モノは売れない
- 好きな彼女とサービス・小売業は、次々のあらわれる
不動産ビジネスに対して、男女関係の比喩が出てきたのが興味深く読めました。本全体からそこはかとない「色気」が感じられます。
人が豊かさを感じられるかどうかは、どれくらい消費するかよりもむしろどれくらい豊かな空間に自分の身を置くことができるかどうかに影響を受ける面が大きいので、センスのある不動産関連会社には日本の都市の景観をよくするため、業界にとって現在の大変な時期を乗り切って頑張ってもらいたいものです。
トラックバックURL
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
日本がどの新興住宅地を覗いてみても、おんなじような、酔っ払って帰ったら間違えそうな家ばかりなのが目立ちます。
そんなことならマンションにでも住めばいいのに、なんて他人事ながら思ってしまうのですが。それとも、土地そのものに対する執着が日本人は強いのでしょうかね。
例え話が飛躍しているかも知れませんが、何でも画一的に都市や地域、いやコミュニティとしての住宅街を作るなどの方策は、
もう少し考えた方が良いのではないのかなと思ったりはします。
自分も不動産は素人ですが、お書きの通り、日本の町並みは統一感と多様性のバランスがよくないように感じます。
「家を持つ」というのはおそらく、人の居住本能とでもいうべきものに根ざしているのかもしれません。サブプライム問題の原因の一つはそのあたりもあるように思います。
日本も昔々の田園の景色は、外国人が驚嘆するくらい風景にとけ込んでいたようです。
私の家の周りも10年位までは回りはほぼ葡萄畑ばかりだったのですが・・・
農業後継者の不足・住民の増加でどんどん宅地化されております。
地元の方は昔よりも夜が涼しくなくなったと言っております。ヒートアイランド現象は都市だけでなく郊外にも広がりを見せているのかもしれません。
由々しきことですね。
田園風景は江戸・明治の頃を念頭に置いていました。戦後に特に風景が大きく変わってように思います。
それだけ日本人に町並みや風景に対するこだわりがないのでしょうが、家は数十年で建て替えるものという意識もあるので、風景との調和はあまり意識していないのかもしれません。
ヒートアイランド現象にしてもそうですが、もう少し全体に配慮した計画性があってもよいと思います。



