2008年08月29日
『日本のお金持ち妻研究』
森 剛志/小林 淑恵著 2008年9月11日発行 1680円(税込)
残念ながらまだ書影がありません。本書は3年半前くらいに出版され半年くらい前に文庫化された『日本のお金持ち研究』の続編となる内容です。今回は富裕層の「妻」に焦点が当てられています。
本書は前書きに書かれているように、いかにしてお金持ちの妻になるかというハウツー本ではなく研究書ですが、図表が多く、コラムなどもあり読みやすく書かれています。
序章に「容姿端麗は絶対条件ではない」とあり、以下のような章のタイトルが続きます。
- お金持ちの結婚
- お金持ちの妻の就業
- お金持ちの妻の節税
- お金持ちの出産、家事、育児、子育て
- 上流階級と家事使用人の歴史
- スーパーキャリアウーマンという生き方
- お金持ちの暮らしと悩み
本書に出てくる富裕層はかなりのお金持ちで、世帯年収の平均が1億円弱、最頻層が年収5000万円から1億円です。ちょっと普通の生活感覚からかけ離れています。しっかりまとめられている本書の調査には、あまり意外な結果はありませんでした。
『日本のお金持ち研究』でもそうですが、医師や医師の妻がよく登場します。本書のような本を読むと医者がお金持ちのように思われてしまいますが、本書に登場する医者は特定の科で開業するか、ある程度の規模の病院を経営している医師です。普通に勤務医をしているとそんなに稼げません。
一般的な勤務医の生涯賃金は給与が高い会社に勤めるサラリーマンと同じくらいでしょう。勤務医の方が有利な点があるとすると、最初の頃の収入が比較的多く、終わりの頃の収入が比較的少ないため、最初の頃にお金を貯めると資産運用がしやすいということくらいです。勤務医の初期の頃に同世代のサラリーマンと比べて給料がよいと思って使って贅沢してしまうのは、ファイナンス的に不利な戦略です。
本書は節税についても説明されていました。基本的な考え方としては、法人を作って妻にも給料を払って所得の分散をするということです。どの程度の割合が一般的に妻へ分散されているかが本書の結果からある程度わかります。意外に少なかったのですが、割合を大きくすると税務調査で否認されてしまうのかもしれません。
本書に協力した方は自らアンケートに協力したということ、協力してくれた方たちのことをまとめて発表する際に否定的なことを書くのは心理的にやや抵抗があることなどにより、本書の結果は若干バイアスがかかる傾向にあるかもしれませんが、いままでにない貴重な調査だと思います。