2008年09月24日
『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』
トマス・J・スタンリー著 広瀬 順弘訳
2008年9月1日発行 880円(税込)
なぜ、この人たちは金持ちになったのか (日経ビジネス人文庫 ブルー す 5-1)
金持ち本の元祖ともいえるベストセラー『となりの億万長者―成功を生む7つの法則』の続編ですが、7年前に単行本として発売されたものが同名のタイトルで文庫化されたものです。いずれもすでに読まれた方も多いと思います。自分も単行本で読みましたが、今回文庫になったので買って読み返してみました。
原書のタイトルは『The Millionaire Mind』(ミリオネア・マインド)です。この言葉は日本語でもよく耳にします。著者はアメリカの大学教授で、本書は数多くの億万長者に対する調査結果がまとめられています。
文庫本ですが500ページ近くあります。章のタイトルは以下の通りです。
- 本当の金持ちってどんな人?
- 億万長者への30の質問
- 天才・秀才は金持ちになれない
- チャンスとリスク、勇気と恐怖
- 金持ちになれる仕事、なれない仕事
- 金持ちになるための配偶者の選び方
- 買い物上手こそ金持ちへの道
- 金持ちの家をのぞいてみよう
- 億万長者のライフスタイル---現実と幻想
- ミリオネア・マインドを身につけよう
ここ数年、日本でも本書のようにお金持ちに対する調査結果をまとめた本が出ていますが、それらに対する本書の影響は大きいと思います。
本書では億万長者になる人は人間的にも望ましい数多くの資質を備えているという論調が目立ちますが、そのあたりはアメリカの国柄を表しているかもしれません。アメリカでは自力でミリオネアになることと人間的に望ましい姿であることが一致するような社会の価値観が形成されているのかもしれません。最後は寄付や慈善事業で完成するようです。
本書では配偶者や住居の選択についてかなりの記述がありますが、配偶者も住居も一生を通じて日々の生活に大きな影響を与え、価値の変動の大きな「資産」であることを考えると納得がいきます。意識するにせよしないにせよ、配偶者と住居はほとんどの人にとって人生で最大の投資対象です。
例えば年収数千万円稼ぐ人であれば、パートナーの有形無形の影響により数千万円単位で年収が変動する可能性があります。住居についても取得のタイミングやメインテナンスで資産価値が大きく変化します。
終わりに「億万長者の八ヵ条」が述べられていますが、さらに短くしてまとめると以下のようになります。
- 人一倍の努力、誠実さ、仕事への情熱が必要
- 学業成績はそれほど重要ではない
- 経済的リスクを取り、失敗しても克服する
- 心から愛着のある職業を選ぶ
- 配偶者は慎重に選択する
- 日々の無駄な支出はしない
- 住宅の購入は慎重に行う
- 対人交流を重視したバランスある生活
本書はどのようにして経済的に成功するかということが書かれている本ですが、昨日紹介した本と関連づけて考えると、投資する場合どのようにして経済的に成功しそうな人を判断するかという本としても読むことができると思います。
創意工夫や努力によって価値を創り出すことにより経済的に成功することを人間的にも望ましい姿と重ねる価値観がアメリカに浸透しているとすると、今回の金融危機では大きな痛手を受けましたが、アメリカは長期的には回復の余地があるかもしれないとも思います。