2008年12月24日
『今こそ知りたい資産運用のセオリー』
竹中 正治著 2008年12月25日発行 1680円(税込)
今こそ知りたい資産運用のセオリー
著者:竹中正治
販売元:光文社
発売日:2008-12-17
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著者はエコノミストをされている方です。本ブログでは以下の経済についての本を紹介したことがありますが、今回は資産運用について書かれています。
『ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層』
著者の専門はマクロ経済の予測ですが、本書は資産運用について理論的な解説を行いつつ、素人の一般投資家として目線でも投資の体験が書かれています。著者のエコノミストとしての影響は随所に見ることができます。
本書は資産運用一般についての本ですが、重点的に書かれている分野は、外貨投資と不動産投資です。外貨は著者の専門に直接関係のある分野として、不動産投資は個人投資家としての投資経験がおもに書かれています。
あくまで資産運用一般についての本なので、株式の個別銘柄の分析法などは書かれていません。投資信託やインデックス投資など、より大きな視点での解説はあります。
著者はエコノミストという職業の影響もあるのかもしれませんが、景気についての循環的な視点が目立ちます。外貨にしても不動産にしても、景気の波の谷近辺で買って、山周辺で売ることを推奨されています。不景気の時に買って、好景気の時に一部でも現金化するということです。
今回の金融危機についても、どちらかというとチャンスであると考えておられるようです。これは、今までに繰り返し景気のサイクルを経た経験から主張されているのでしょう。以下のように書かれています。
「金融・投資のグローバル化の波に周回遅れで走ってきた日本人に今こそ「黄金の波」は微笑んでいる気がしてならない。外国人投資家たちの投げ売りで世界の株価が暴落している時にこそ私達は言い返してやろうではないか。「どこが相場の底かって?連中が売り切った時が底だよ。だから今投資するんだ。」」
読み方によっては、かなり強気の発言です。
景気は循環しますが、問題は底打ちまでの期間です。今回の金融危機もいずれは収束して底を打つのでしょうが、それがいつになるのかは確率的にしかわかりません。
今回の金融危機も含めて景気後退が早期に底を打つかどうかは、危機の原因を認識しているかどうか、それを解決する動きがあるかどうか、解決後に経済成長の条件がそろっているかどうかですが、グローバルに眺めると、日本のバブル崩壊後に比べて、これらの条件はよいのではないかと思います。
自分も含めて、株式投資をする個人投資家は景気についてやや楽観的なバイアスがあると思うので、このあたりは割り引いて考えた方がよいでしょう。
日本自体には悲観的ですが、世界の経済成長が再び始まれば、日本の産業構造が急激には改善しなくても、世界全体の経済成長のおこぼれにあずかれるのではないかと思います。もちろん日本の産業構造や金融の仕組みがより効率的に変化するに越したことはないのですが。


