2008年12月26日
『金融危機こそ大チャンス! 利益を上げる賢者の投資術』
岩崎 直著 2009年1月7日発行 1575円(税込)
金融危機こそ大チャンス! 利益を上げる賢者の投資術
著者:岩崎 直
販売元:総合法令出版
発売日:2008-12-24
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著者は自ら投資を行う個人投資家ですが、資産運用のコンサルタントもされている方のようです。過去に投資について多くの本を書かれていますが、ここ数年に出たものはなく、本書は久々の著作のようです。
本書は資産運用コンサルタントとしてのマーケティング的な意味合いのある本ですが、現在の市場についての見方、そして投資や投機についての著者の考え方を学ぶことができます。
著者は個人投資家としても現役の方であり、本書では今回の金融危機の影響でマーケットが大きく変動した今年秋頃の相場について、著者のその時のポジションの解説なども読むことができます。その部分にはかなりの分量の記述があり、臨場感があります。
本書はどちらかというと、投資というより投機についての本です。著者は少なくとも成熟した日本経済の株式市場においては、あまり長期投資は薦めていません。
今回のようなパニックによる急落相場では、日経平均先物をの売買を推奨されています。しかしながら、この方法はある程度相場に貼り付ける状態でないと難しいかもしれません。
投機家にとって、ボラティリティの高い市場は大きな儲けのチャンスですが、本書に書かれている手法の「旬」は過ぎてしまった可能性もあります。しかしながら、これからもボラティリティの高い状態になる可能性もあるかもしれません。
本書は、著者のマーケティング的な意味合いもあるのでしょうが、富裕層に対する資産運用についての説明も充実しています。著者が本書のような内容の本を今の時期に出されたのは、今の時期に富裕層にアドバイスをするのは、よい時期であると見なされているからでしょう。
これからさらに株価は下落するかもしれませんが、おそらく今の時期に適切な株式の銘柄に投資するのは、あまり割の悪い選択ではないと思います。今の時期に富裕層に適切なアドバイスできると、後に感謝される可能性が高いでしょう。そのように考えると、著者は機を見るに敏な方なのではないでしょうか。
「100年に一度の金融危機」という言葉もすっかり定着しつつありますが、この言葉は資産を任されている業界の方が顧客に現在の状況を説明する場合に便利な言葉です。
本当に「100年に一度」かどうかは、後の金融史家が結論を出すことでしょう。個人的には、今までのところ、バブルが崩壊してからの日本の状況の方がよほどひどい状態だと思います。危機的な状況であったのに、危機であることをずっと認識できなかったからです。ひょっとすると、今でも認識できていないのかもしれません。
それと比べると、現在の状況については、危機感が世界中で共有されています。危機感が大きく共有されればされるほど危機的でないと思います。最も危機的なのは、危機を危機であると認識できないことです。


