2009年01月07日
『ザ・クラッシュ―暴落から資産をどう守るか』
2004年9月16日発行 1680円(税込)
ザ・クラッシュ―暴落から資産をどう守るか
著者:マーティン・D. ワイス
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2004-09
おすすめ度:![]()
クチコミを見る
本書は原書が出版されて5年以上、日本語訳が出て4年以上経っていますが、今こそ読まれるべき本であると思います。本書に書かれていることは、出版当時より現在の方がより当てはまるかもしれません。
本書は、アメリカ経済が内包する株式市場や債券市場の暴落の危険性に対して、小説の形式で警鐘を鳴らす内容になっています。著者は格付会社の会長をされている方で、1980年の初期に日本の証券会社でアナリストをされていたそうで、本書では日本についての話も多く出てきます。
本書が書かれた当時は、エンロンやワールドコムの不正会計事件が発覚したしばらく後であり、アメリカで企業会計がきびしく見直された時期でした。本書の主旨は、企業のみならず、アメリカ政府も会計の不正を働いているというものです。
アメリカ政府の実際の負債は膨大であり、国民も借金をして消費を続けているため、その状態が続いて、アメリカの株式市場や債券市場が「クラッシュ」するという内容になっています。破綻後の処理方法まで述べられており、そのような意味おいて、現在でこそ参考になる内容です。
本書が書かれた頃は、まだサブプライムローンは問題化していませんでしたが、借金による過剰消費とデリバティブの危険性については、現在の金融危機を予想していたかのごとく書かれています。
著者の考えでは、アメリカ経済は本書を書かれた6年前の状況ですら危機的な状況であったようです。しかしながら、その後不動産バブルを経て、アメリカはさらなる膨大な不良債権を抱えてしまい、今後も政府はさらなる負債が生じつつあります。状況は当時よりさらに悪化しているようです。
株式市場は、数ヶ月前に「クラッシュ」したと考えてよいと思いますが、これで終わったとは言えないかもしれません。本書の物語では、アメリカ国債などの証券につても「クラッシュ」することが書かれています。
今後さらなる金融危機のヤマがあるとすると、それはアメリカ国債の「クラッシュ」になるのかもしれません。
現在アメリカの10年物国債の金利は下がっており、債券価格は上昇していますが、今回の金融危機の発信源となり、一番の大きな影響を受けた国の国債が高止まりしているのは、不自然な印象を受けます。
世界中で買い支えていることもあるのでしょうが、市場原理を信奉している国の国債を、市場原理を無視して世界中が買い支えているのは皮肉なことです。
ファンダメンタルズから乖離した金融商品の価格は、通常はいつかは修正されます。本書を読むと、アメリカ国債の「クラッシュ」もいつかは起こるのではないかとの思いが強くなり、米国債のプットオプションを買っておきたくなってしまいます。米国債券市場はバブルなのかもしれません。
本書の結論としては、痛い思いをすることを避けずに、清算するべきものは清算し、耐えるべきものは耐え、変えるべきものは変えるということになります。現在市場は小康状態ですが、これらのプロセスはほとんど進行しておらず、マーケットはまだまだ予断を許さないと思います。


