2009年05月05日
『身体は何でも知っている 〜仕事も人生もうまくいく整体的生活術』
三枝 誠著 2007年5月7日発行 1575円(税込)
身体は何でも知っている 〜仕事も人生もうまくいく整体的生活術
著者:三枝 誠
販売元:アスペクト
発売日:2007-04-25
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2年前に単行本として発売された本ですが、最近通読して面白かったので、ご紹介します。著者は整体を30年間にわたり実践されている方で、本書は月刊誌に書かれた性をテーマにした小論文がまとめられたものです。
男女の本はとかく抽象的・精神論的なものが多いのですが、本書は身体論に基づくため新鮮さがあります。男女関係の本のみならず、人生や生活についての本としても読むことができると思います。本書の章のタイトルは以下の通りです。
- ベストカップルは、なぜ別れるのか?
- 「あげまん」は、本当に実在するのか?
- 世界最強のオーラ型美女「かぐや姫」
- 「幸せ肌」のつくり方
- 人生を変える、究極の「性の指南書」
- 骨盤を知らずして、女体を語るなかれ
- 身体が教えてくれる、あの人の好み
- 「ひとり食事」は、うつ病食!?
- 人と触れ合ってできる”自分”
さまざまな角度から、身体を通じて男女のことが語られています。著者は野口整体で有名な野口晴哉氏のお弟子さんなので、本書にも野口整体の話がよく出てきます。
野口整体の本はアマゾンや一般の書店ではなかなか手に入りにくいものも多いのですが、かなり昔に全部通読しようと思って読み始めたことがあります。5〜6冊だけ読んだのですが、女性について封建的な記述が多いので、当時は少し距離を取ってしまい読むのを中断してしまいました。
しかしながら、時間とともにやはり男女はある程度役割を区別して理解した方がよいと思うようになり、今後野口整体の本は読み残したものをすべて通読するつもりです。ちなみに文庫本でも入手できるものがあり、いくつか以下に紹介します。
本人が書かれた入門書としては、本書がスタンダードです。ただし、昔に書かれた本であり、整体の世界に馴染みのない方には違和感があるかもしれません。
野口晴哉氏の人となりを知るには、氏の妻が書かれた以下の本が読み物としても面白いです。
これら以外にも、野口整体に限らず、筑摩書房は整体関係の本が充実しています。
男女にかかわらず、身体性は人間の幸福感にとって非常に重要ですが、文明が発達し社会が高度化するにしたがって、その重要性が過小評価されるようになってきました。
それどころか、身体性を抑圧する傾向すらあります。身体性が抑圧される傾向にあるのは、身体的に正しいことと、社会を成り立たせているルールが必ずしも一致しなくなっており、場合によっては相反することすらあるからです。
社会的にはある程度仕方ない部分もありますが、比較的個人的な関係である男女関係や家族関係においてすら身体性が軽視されるようになっています。問題が深刻なのは、身体性が軽視されている意識すらなくなってきていることです。
男女の相性の基本は、同じ場にいて心地よい、触れて気持ちいいだと思いますが、社会が高度化すると、それ以外の「邪念」が気になり、相性のよい人との縁を遠ざけてしまいます。
ちなみに、投資や金融の世界は身体性から遠い世界です。投資や金融が悪いイメージで語られやすいのは、身体性が乏しいことも関係しているように思います。金融経済と対比されて実体経済が語られる場合に使われる「額に汗して」という表現は、身体を感じさせます。
ふだんの生活において、身体性から遠い仕事をされている方は、バランスを取るためにも、身体性を取り戻すことができる活動をするのがよいと思います。最近の日本では、ほとんどの方が当てはまるかもしれません。
と言っても、身体性から遠ざかっている現代人は、身体性と言われてもわかりにくいことがあるかもしれません。そのためには、まずは身体性というものがどのようなものであるか認識する必要があります。
本書は身体性ということについて、男女の観点からわかりやすくさまざまな角度から説明されています。男女関係はほとんどの人にとって興味あると思うので、本書は身体性を学ぶための導入の本としてもよいと思います。