2009年05月07日
『恐慌の黙示録―資本主義は生き残ることができるのか』
中野 剛志著 2009年4月23日発行 1680円(税込)
恐慌の黙示録―資本主義は生き残ることができるのか
著者:中野 剛志
販売元:東洋経済新報社
発売日:2009-04
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著者は経済産業省に勤務されている方です。本書は、今回の金融危機をきっかけに世界的に反省されている資本主義のあり方について、ミンスキー、ヴェブレン、ヒルファーディング、ケインズ、シュンペーターの資本主義についての考察を振り返りながら、著者の考えがまとめられている本です。
著者のバックグラウンドが政治思想にあるためか、本書は思想的、哲学的な考察も豊富で、一般的な経済書を越えた深みがあると思います。
本書では、まず5人の経済学者が資本主義についてどのように考えていたかが、主に資本主義の限界と修正について一章ずつを割いて述べられており、各経済学者の考えについての簡潔な説明になっています。
本書では、現在の世界経済の状況を反映して、資本主義、とくに金融資本主義の限界について焦点が当てられています。とくに話題になっているのが、企業における所有と経営の分離、投機の是非、経済における国家の関与などについてです。
著者の主張は、最近勢いのあった新自由主義的と比較すると、やや保守的な感じがありますが、バランスを取ることの重要性は強調されているので、著者の主張が保守的に思えること自体が、日本を含んだ最近の世界経済が新自由主義的に偏っていたということなのかもしれません。
最後の部分で日本的経営を高く評価されているのは、著者が所属されている組織の無意識的な影響もあるのかもしれませんが、著者が重視されている共同体的な安定性を日本的経営が有していることを考えると、本書の主旨に合致しています。
著者がバランスを取ることの重要性を書かれながら、結論としてやや金融資本主義に否定的な印象を受けるのも、やや保守的な印象を受けます。ひょっとすると、時代の偏りを考慮してさらにバランスを取るために、敢えて保守的に書かれているのかもしれません。
金融経済と実体経済の対立的な議論は、その根本に人間の精神性と身体性の対立があると思います。個人のレベルで精神性と身体性の統合が必要であるように、社会についても精神性と身体性の統合が必要です。
二者択一的に考えると楽なのですが、実際は決めない状態で両者をバランスよく併存させ統合するのが課題です。
本書は現在の時代状況を考えると、とくに日本人に受けると思いますが、それは日本が身体性を重視する方向に偏っているということがあります。これからの日本人の課題は、本来持っていた失われつつある身体性を再構築しつつ、不足している精神性を補うことです。
「金融資本主義」は崩壊したにせよしないにせよ、金融が日本人にとってこれからも重要であることには変わりないと思います。
著者は話としてはすべてを理解されており、バランスを取ることの重要性までも言及されていながら、結論がやや保守的と思えるようなものになってしまうのは、やはり著者の立場が影響しているのかもしれません。
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この記事へのコメント
いつもながら先生の読書量と的確な解説には頭が下がります。購入する際の参考にさせて頂いております。
最近、私も日常性をテーマとしたブログを書くようになりましたが、毎日続けることの大変さがわかりました。
これからもお体に気をつけて良書の紹介をお願いいたします。
過分な御評価をいただきありがとうございます。
ブログを毎日続けるのは、ネタと根気の両方が必要で大変ですね。本ブログの場合は次々と新しい本が出版されるのでネタには困らないのですが、モチベーションの継続は必要です。
あたたかい御言葉をいただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。


