2009年05月15日
『バカヤロー経済学』
竹内 薫著 2009年5月20日発行 840円(税込)
バカヤロー経済学(晋遊舎新書005)
著者:竹内 薫
販売元:晋遊舎
発売日:2009-05-12
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著者は一人になっていますが、本書の構成は竹内薫氏が「先生」から講義を受ける内容になっており、本来は二人の共著書のはずでした。以下の文は、あとがきからの抜粋です。
「だが、発売直前になり、突然、先生はスキャンダルに巻き込まれた。」
「先生」が誰かは、本書の内容から明らかですが、本書では先生の固有名詞はどこにも明記されていません。
本書の主な講義内容は、緩和的な金融政策のすすめや官僚支配に対する批判です。「先生」の過去の著作を読まれた方であれば、本書に書かれている内容はよく御存知であると思います。
本書は対談形式なので裏話的なエピソードが多く、どちらかというと読み物として面白い本です。本書では官僚に対して都合の悪い人が「消されて」しまうという「先生」の話も出てきます。
「先生」について解せないのは、そのようメカニズムを熟知していながら、極端な反官僚的な立場を取って、官僚の方々の気持ちを逆なでするような話をされていることです。
これは、人間は自分のことは分かりにくいということを表すのか、自分の将来を知っていながらどうしようもできなかったのか、あるいはさらなる戦略があってそのようにされていたのか、あるいは別の理由があるのか分かりかねるところです。
政策的な提言など、「先生」の話には今でもうなずかされる点が多いのですが、結果からすると、「先生」の戦略は玉砕と言われても仕方ないのかもしれません。
人間が自分の主張を通じて世の中に影響を与えようとするときは、実現したい内容だけでなく、実現するための方法も同じように重要なようです。
「先生」の力は、実務上の強力な権限を有している人の下で最も強く発揮されるものであったのかもしれません。そのような時期が再び来るまでは、雌伏しておいた方がよかったのかもしれません。
表現を工夫して自分の考えを世の中に伝えるのはよかったと思いますが、現時点で実務上の権力を握っている方々の感情を刺激するのは、方法としては望ましくなかったかもしれません。
「先生」に日本を変えたい気持ちがあるのであれば、しばらくはガマンの時期であったのかもしれません。今後、いろいろな意味でパワーアップされての再起を期待したいところです。