2009年06月12日
リバースインディケーターとしての自己感情
投資では、「当たり屋につけ」、「曲がり屋に向かえ」という格言があります。この両者は対になる格言です。
「当たり屋につけ」とは、相場に勝ち続けている人と同じポジションを取る方がよいということであり、「曲がり屋に向かえ」とは、逆に負け続けている人とは逆のポジションを取った方がよいという意味です。
記事のタイトルのリバースインディケーターとは曲がり屋のことです。いつも負け続けている人が買うときは売りのインディケーターとなりますし、売るときは買いのインディケーターになります。
相場に参加する人のうち8〜9割は負けていると言われます。自然な人間の心理にしたがって売買を行うほど、負けの可能性が大きくなります。
参加者の多くが楽観的で、安心して買える雰囲気が蔓延してるときは上昇トレンドの終わりに近い高値圏のことが多く、とても買えない悲観に満ちているときは下降トレンドの終わり、言い換えると上昇トレンドの始まりか、底値圏の横ばいの始まりです。
今回の下落相場において、日経平均が8000円を切ったくらいから、十分に安くなったと思いいくつかの銘柄を買いました。ところが、さらに相場は下落を続け7000円程度まで下落し、市場全体に悲観的な雰囲気が満ち、さらに下がるかもしれないとの不安から保有銘柄を強烈に売りたくなりました。
売りたいのは楽になりたいからです。株を手放すと、資産が減る恐怖からは逃れることができます。
ふだんはほとんど売買をしないのですが、ほとんど売買をしない自分が強烈に売りたくなっており、市場でも総悲観なので、ひょっとすると底値かもとも考えました。ただし感情的には売りたい気持ちで一杯です。
そこまで売りたくなったのは初めてなので、自分自身の感情をリバースインディケーターとして、実験的に逆に買ってみようと思いました。「実験」とでも思わないととても買う気になれません。実験ですが、あるていど自分にとってまとまった額の株式を購入しないと本当に買ったとは言えないので、それなりの額を投資しました。
せっかくなので、それまでに最も下落幅の大きかったセクターである不動産銘柄を買いました。さすがに倒産の可能性が比較的低そうな銘柄を選びました。
その後の株式市場の上昇で、その銘柄は現在買値からかなり上がっています。自分の感情と反対の売買をするという実験は、今回はうまくいっています。
このことを書いたのは、別に自慢したいからではありません。今回の上昇で少々上がっても、それ以前に金融危機による下落相場でかなりのマイナスがあります。
何が言いたいかというと、やはり相場は自分の自然な感情と反対の売買をするようにしたほうがよいのではないかということです。
では、現在の自分の感情はどうでしょうか?
下落時に購入した上記の不動産銘柄は4倍程度になっています。現在は感情的に利益を確定したくて仕方がありません。売って利益を確定すれば気持ちが楽になります。
ただし、感情をなるべく除外した理性では以下のように考えてもいます。
- 4倍になったからといって売りたがるのは、買値にこだわっているという意味でおかしい
- 相場においてはなるべく早めに利益を確定したがるバイアスを人間は持っている
- 投機のセオリーでは利が乗っている銘柄には資金を追加するという考えもある
選択肢としては
- 全部売る
- 一部売る
- そのままホールド
- さらに買い増し
があります。心理的にやりやすいのは売ることです。
そこで今回も感情と反対のことをすることにしました。売りたい気持ちがあるときの反対は買うことですが、さすがに買い増しはせずに単に買いポジションをホールドするだけです。ストップは買値の3倍に設定しました。
この銘柄は今は売りたいので売りません。今後売るのは売りたくなくなったときですが、売りたくないときに売る方が、買いたくないときに買うよりもさらに難しいかもしれません。