2009年08月07日
なぜクスリを使う芸能人がいるのか?
ここ最近連日のように著名な芸能人が違法な薬物を使用しているというニュースが世間を騒がせています。
実際に芸能人の方々が一般の人たちと比べて違法薬物を乱用するという統計データがあるかどうかはわからないのですが、ここではクスリをやりたくなる気持ちについて考えてみたいと思います。
薬物の種類にもよりますが、今回の二種類の薬物、MDMAと覚醒剤は両方とも作用が似ており、覚醒系のドラッグです。摂取すると、気持ちが高揚して多幸感が生じたり、性的な感覚が鋭敏になったりする作用があります。
覚醒剤は戦時中の日本では「猫目錠」の名前で軍事的に用いられたりしており、戦後にその名残で乱用していた人も多くいました。わかりやすく作用を表現すると、いわゆる「ハイ」になるわけです。
人間が幸福感を一般的に感じるのは、欲しいものが得られたときややりたかったことが達成できたときです。しかしながら、普通は常に欲しいものがすぐに手に入るわけではありません。
何か欲しいものがあれば、それを手に入れるべく頑張って、その結果それらが手に入ります。おいしいもの、異性、お金、名声などが一般的に皆が欲しがるものでしょう。でも、すぐに簡単には得られません。
しかしながら、成功した芸能人であれば、これらのものは容易に手に入りますし、ある程度成功した頃から身の回りに溢れていることでしょう。
一般に人たちが渇望するこれらのものは、大成功した芸能人の周りには溢れており、おそらくこれらのものを新たに手に入れたとしても、一般の人々に比べると手に入れたときの満足度は低いことでしょう。食事はおなかが空いているときにする方がおいしく食べられることを考えるとわかります。
欲望が満たされないのはつらいことですが、欲望が満たされておりそしてその欲望が容易に満たされる状態であるのは、実はさらにつらいことかもしれません。
欲望が満たされていない人は、満たされていない欲望が満たされる過程においてそれなりの満足感が得られるのに対し、欲望が十分に満たされている人は満たされる過程で得られる満足感が得られにくいからです。
あらゆる世俗的な欲望が満たされた後に、さらなる満足感を得るには欲求をより高いレベルのものにする必要がありますが、それがうまくいかないと、満たされない満足感を得るための安易な方法はドラッグくらいしかありません。
芸能人の方がドラッグを乱用することがあるのは、満たされたからこそ満たされなくなっているという逆説的な理由もあるはずです。
多くの人にとってこれは他人事のようにも思えますが、実は本質的には身近な問題です。食欲もある程度満たされると、より美味しい食事を追求するようになります。美味しい食事を追求した究極の形は、美味しい食事に満足できなくなる状態です。
今後世界全体の生産性が高まって、人間の原始的な欲望が今よりはるかに容易に満たされるような世界が遠い将来に到来するならば、基本的な欲求を満たした後にどのようにして人が幸福感を得るかは大きな問題になることでしょう。
覚醒剤は乱用すると被害妄想などの症状が出ることがあるので問題なのですが、将来副作用がほとんどないような覚醒剤が出たとするとそれをどのように扱うかについても議論されるかもしれません。
おそらく最も望ましいのは、自分自身で幸福感が生じるような神経伝達物質が出るようにすることでしょうが、そのあたりの人間のポテンシャルについてはまだコンセンサスが出る形で理解されていないようです。
トラックバックURL
この記事へのコメント
なるほど、満たされているからこそ、さらに満たされようと麻薬に走るということですか。
僕もなぜ芸能人に薬物中毒が多いのか考えたことはあります。
もちろん様々な原因があるのだとは思いますが、僕が思ったことは、
売れてハイになっている状態と、売れてない状態で少し落ちこんでいる状態との落差に対して精神的にもたないことや、
芸能界は、アドレナリン・ドーパミンに対して貪欲な人間が多い(逆にだからこそある程度成功して芸能界入りする)
ということもあるのではないかと思いました。
もちろん、もともと闇社会とのつながりも濃く、薬物が簡単に入手しやすいということもあるかもしれないですが。
と言うことは、○○が欲しい、こんな生活がしたいというプチ欲求不満状態が一番幸せってことですね。今を楽しもうと思いました。
お書きの通り、職業的な環境における気分の落差が激しいことや、もともとハイテンションになりたい方が芸能界に多いということ、手に入れやすさの問題もあると思います。参考になる意見ありがとうございます。
薬物を使いたくなるということは、業界自体に少し無理がかかっているのかもしれません。どの業界でも、その業界特有の問題はあるとは思いますが。
>まるこさん
たしかにプチ欲求不満がある状態は満足感を得られやすい状態であるとは思うのですが、頑張っていると満たされてしまうこともあるので、やはり満たされた後にどうするかということも問題になってくるとは思います。
一般的な欲求が満たされきった状態は非常につらい状態で、いろいろともがいて苦しみやすいのですが、そこからなんとか抜け出したときに新たな幸福を見つけることもできるのではないかと考えています。
たしか子供時代は家庭環境的にかなり寂しい思いしたんだよね。
で、アイドルとして成功したけどそれは「清純派」としての表面上の売りの部分で、きっとのりピーはペルソナのような影の自分もずっと抱えて生きてきたんだと思う。
同時に逮捕された自称プロサーファーの旦那だけど、一般的な見方をすれば、何であんなチャラチャラしてるっぽい旦那をのりピーは人生の僧侶として選んだのだろう?と思いがちだが、
きっとのりピーにはあの旦那がものすごく「自由に生きている」ように見えてそこに引かれちゃったんじゃないかな?
だからのりピーが夜な夜なレイヴパーティーなんかに参加したり足首にタトゥーを入れたのも
本当の自分と表面的な自分とのギャップをまぎらわそうとしてたんだろうと思う。
子供の頃、とても寂しい環境で育ったのりピーの少女的部分が本当は癒されておらず、
封印したまま大人になってしまったから、その少女が爆発して今回の事件を起こしてしまったんだと思う。
人生まだ長いんだし、のりピーには頑張ってもらいたいなぁ‥
理由はともあれ覚醒剤に走ってしまうのは、やはり何か満たされていないものがあるのではないかと思います。その一つの表現が「心の闇」になるのかもしれません。
特定の人を伴侶として選ぶのは、お書きの通り、自分でも意識できていない自分に欠けている部分を埋めてくれる場合が多いようです。
覚醒剤を使用するのは、やはり法的には違法なのでよくないことではあるのですが、個人の心理を考えると、満たされないものがあったことはたしかだと思います。
今後は、逮捕をきっかけにしてその満たされない部分と向き合い、あるいは向き合わなくても行動を変化させることにより、その人の課題を乗り越えて、より人間的に成長されることを期待したいものです。
後から振り返ると、今回の事件も成長の一つの過程に過ぎないと思います。
ほんとうの幸福感に満たされるためには、やはり謙虚な心がなくてはならないのでしょうね。
記事を御評価いただき嬉しく思います。謙虚な心は心の負担を軽くするので、幸福感に満たされやすくなるようです。ただし、本当の意味で謙虚であることは、そうやさしくはないようには思います。


