2009年08月19日
『経済危機は9つの顔を持つ』
竹森 俊平著 2009年8月17日発行 1680円(税込)
経済危機は9つの顔を持つ
著者:竹森 俊平
販売元:日経BP社
発売日:2009-08-12
クチコミを見る
本書のタイトルからは、同じ著者の『世界デフレは三度来る 上』『世界デフレは三度来る 下』を思い浮かべます。本書は今回の金融危機を主なテーマとした著者と9人の方々との対談集です。
本書の対談は、6ヶ月前から2ヶ月前にかけてネット上に掲載されたものであり、比較的新しい内容です。本書は400ページ以上のボリュームがあり、対談相手も各界で著名な方ばかりです。
本書の対談相手は、不動産、金融、政治、医療などさまざまな分野の方々が集まっていますが、どちらかというと体制側の方が多いような印象です。
過去の著者の本は独特の面白さがありますが、著者が選ばれた本書の対談相手を見ると、著者の興味の範囲の広さをうかがうことができます。
本書の対談を読むと、立場が人の考えをつくるということがわかりますし、その考えを強化するような立場にその人が位置することもわかります。
本書からは、著者が各対談相手にかなりの敬意を表されていることが伝わってきますが、それでも議論するべきところはされています。対談の前に著者のよくまとまった解説がありますが、おそらく対談の前からある程度それぞれの対談相手に尋ねてみたいことがあって相手を選ばれているのでしょう。
今回の金融危機の今後については、著者はどちらかというと悲観派に属するかもしれません。本書を読むと、今回の金融危機はまだまだ予断を許さないことがよく伝わってきます。
本書読むと、本来経済学はその世界で完結するものではなく、他の業界の影響を取り入れながらダイナミックに展開するものではないかと思わされます。経済学の内部だけで閉じられている経済理論は理路整然として美しいのですが、現実の世界から遊離してしまうのかもしれません。
実際の世界を経済学的に理解するには、経済理論の理解に加えて本書のようなスタイルで、他の業界の方々と対話をすることが必要なのではないかと思います。なぜなら現実の世界はすべての業界を含んでいるからです。
本書を読むと、著者の本がなぜ単なる経済書の範囲を超えて面白く書かれているのかが分かるような気がします。ただ欲を言うと、非体制的な人も対談相手として少しは選んで欲しかったように思います。そうすると、より本書が魅力的になったかもしれません。