2009年08月24日

この記事をクリップ! Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーを含むはてなブックマーク

『いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか』5

大屋 洋子著  2009年8月20日発行  880円(税込)

いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか (講談社+α新書 475-1A)いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか (講談社+α新書 475-1A)
著者:大屋 洋子
販売元:講談社
発売日:2009-08-21
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

中高年男性の「妄想」が肥大してしまいそうなタイトルです。タイトルに「いま」とあるので、これは最近の傾向なのでしょう。

著者は大手広告代理店系の会社に勤務されている方です。マーケティングリサーチの仕事などもされていたようで、本書は大規模な調査の分析は前提としてありますが、さらにリアルなケースについての聞き取りも充実しています。



本書の目次は以下の通りです。序章は「変わりゆく日本人の恋愛観」となっています。

  1. ストレス解消のための恋愛
  2. オトコの壁とオンナの壁
  3. ”受け入れられたい”二十代女性
  4. ”安らぎたい”四十代男性
  5. ”いつまでも女でいたい”四十代男性
  6. ”傷つきやすい”二十代男性
  7. ”恋愛市場にいない”三十代男性

終章は「二十代女性と四十代男性の必然」で締められています。

本ブログでも以前紹介しましたが、社会現象を起こすようなベストセラーとなった『婚活時代』を現代日本の恋愛・結婚を映し出す「オモテ」の本とすると、本書は「ウラ」の本であると言えると思います。

『婚活時代』は現代日本における恋愛・結婚の世相を巧みに映し出した本ではありますが、『婚活時代』を紹介したときに感じた違和感は、「オモテ」の部分だけを描いたことによるものであったと思います。本書で「ウラ」が表現されることによって、スッキリしない感覚が解消された読後感がありました。

婚活は時代の大きな流れに逆らっているように思うのですが、本書に書かれていることは時代のトレンドに乗っているように思います。あくまで善悪の価値判断を超越した視点から眺めてですが。

本書に高い評価をつけさせてもらったのは、不倫などの問題に踏み込んでいるにもかかわらず、それを裁くような余計な価値判断がなされていないからです。

本書は女性の著者によって書かれていますが、女性の著者によって書かれている男女の不倫などを扱った本は、世間的な価値判断で裁くような語り口調の本か、過剰に不倫を正当化するような「突っ張った」語り口調の本が多く、なかなか本書のように冷静に分析されている本はありません。

なぜ二十代女性がわざわざ四十代男性を選ぶことがあるかの理由は本書で詳しく分析されていますが、ここでは経済的な理由について書いておきます。

ちなみになぜ三十代男性をとばして四十代男性になるのかというと、本書で解説されているように、三十代はロスジェネ世代だからです。

四十代の男性と二十代の男性を比較すると、四十代の男性の方が人生経験、優しさ、包容力、経済力、そして性的な面において優れています。女性の場合と異なり、子供を作るという観点からは、生物学的にも四十代の男性が二十代男性と比べて劣っているということはありません。

もともと男性がある程度の年齢を経ていることは、昔からそんなにはマイナスになっていなかったはずです。いままで女性が若い男性を選んでいたのは、独身の若い男性は結婚による経済的な安定をもたらしてくれるという無意識の計算があったからでしょう。

しかしながら、現代は結婚による経済的なメリットが少なくなってしまいました。若い男性が結婚対象になりにくくなったため、恋愛対象としての既婚者が持っていた結婚できないというハンディは少なくなったわけです。

男女関係は多分に経済的現象です。今後も経済的合理性がある方向に男女関係は変化してゆくことでしょう。社会は恋愛によって消費させる方向に向かうので、お金がない二十代男女同士が付き合うことよりも、お金のある四十代男性が二十代女性に贅沢にお金を使うことを推奨するような流れもできることでしょう。

男女の関係は人々が思っている以上に可変性のある関係です。ある現象によって経済が活性化することになるのであれば、正当化する理屈はあとからついてきます。

おそらくこれからは、婚外の恋愛が活発になるような時代にフィットするような言葉や概念が出てくることでしょう。本書に書かれている内容はその先駆けかもしれません。

婚活はどこか人間の原始的な欲求に逆らっている不自然な感覚がありますが、本書に書かれている現象は原始的な欲求にしたがっていると思います。婚活は一時的なブームで終わる可能性がありますが、本能的な欲求に従った恋愛の解放は長期的なトレンドになるかもしれません。



investmentbooks at 23:43│Comments(4)TrackBack(0)clip!本--男女関係 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by これでいいのだ   2009年08月26日 03:12
4 沢尻エリカ夫婦の年齢差はスゴイけど、
世間一般があの二人を心理学的にどう思ってるか興味深い。
あれは単にありがちな、青年実業家が妻にアイドルや女優を選ぶってのとは違うでしょう?
心理学のことはよく知りませんが、エディプスなんたらとか、なんとかコンプレックスみたいのあるじゃないですか?
あの夫妻は、二人のそういうやつがガッチリ噛み合っちゃってる感がないすか?
基本、20代と40代の恋ってそういうことじゃないですか?
欠けてる部分が引き合っちゃったみたいな‥
2. Posted by マリンゾウ   2009年08月26日 19:05
身の回りをざっと見ると20代の恋愛市場に男性の数は少なくって、そこに30代の男性、40代の男性が以前より進出しているように思います。20代で貪欲な男性少なく、20代の男性一握りが勝ち。

40代以降はなんとか結婚ができているようです。私見ですが、この世代までが男女とも結婚は義務であると(無意識にでも)考えている世代でしょう。
3. Posted by マリンゾウ   2009年08月26日 19:10
30代は結婚が義務と権利のハザマ世代。ここいらの葛藤により婚活必要となっています。結婚は国民の義務ではありませんから、本来葛藤する必要がない。やはり根底には「結婚は義務」的考えが少しあるのではないかと。

20代になると結婚がはっきり権利になってくるのかと思います。権利ですから誰でもできない。恋愛も権利。無資格者には参入の余地もない。

40代になると「結婚は義務、恋愛は権利」なんて考えているのかもしれません。

4. Posted by bestbook   2009年08月26日 23:06
>これでいいのださん

沢尻エリカ夫婦のことは本書にも出ていました。年の差婚は父性的なものに対する憧れもあるようですね。

カップルは年の差婚に限らず、お書きの通りガッチリかみ合っている何らかのものがあるようです。カップルには、相手を通じて自分を知るという面があると思います。


>マリンゾウさん

20代の男性は草食化していますね。20代は経済的に安定しないため、経済的な価値が低くなってしまっています。

個々のケースはさまざまですが、マクロ的には女性は経済力のある方に流れてしまうので、正社員として就職できたのが当然であった40代には余裕があります。

日本は60代以上の高齢者が金融資産の形で富を独占しているというのはわかりやすい話ですが、雇用形態の形で40代・50代が富を握っています。これは少しわかりにくい形ですね。

いずれにしろ、今の20代・30代は経済的に割を食っています。繰り返しになりますが、経済的に割を食うことは、異性の面でも割を食うことになります。

今の40代が「結婚は義務」と思えるのは、結婚生活を保障する経済的な安定性や将来の成長の期待があったからでしょうね。

現在の経済状況では、現行の結婚制度は行き詰まっているので、何らかの変化が必要かもしれません。

少子高齢化の解決のためにいかに結婚させるかにこだわっていることが、かえって問題の解決を難しくしているかもしれません。

いかにして結婚させるかではなく、いかにして結婚しなくても子供を産んで育てることができるような社会にするかという根本的な変革が必要とされている可能性があります。

ただし、このような問題はドラスティックな解決は難しいでしょう。法律の根本的な部分を変える必要がありそうです。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
プロフィール
bestbook
家業再生のためしばらく書評ブログを休止していましたが、一段落したのでブログ再開します。以前は1日1冊のペースでしたが、今回の更新は不定期です。書評は以前と同じようにビジネス、投資、経済本が中心となりますが、これからはそれ以外の本の紹介に加えて、3年間集中して行った家業再生、その他アイデアだけは溜めていた多くのことを気ままに書き綴る予定です。
このブログについて
2006年に開始し2010年7月にいったん休止。2013年7月より再開しました。
以前は1日1冊のペースで書評していましたが、再開後は不定期更新で、書評以外についても書きます。
ブックマークに登録
このブログをソーシャルブックマークに登録
このブログのはてなブックマーク数
アマゾン検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ