2009年09月06日
『”超”格差社会・韓国』
九鬼 太郎著 2009年9月1日発行 735円(税込)
超格差社会・韓国 (扶桑社新書 56)
著者:九鬼 太郎
販売元:扶桑社
発売日:2009-08-28
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著者は韓国在住の日本人企業家で、30年以上韓国について研究され、韓国語も堪能な方のようです。本書は「超格差社会韓国」の実状について、現地の視点で報告されています。
どちらかというと見たままを書かれた報告的な内容であり、あまり数字を用いた分析的な内容ではありません。そのような点では、読み物として肩肘張らずに興味深く読むことができます。本書の目次は以下の通りです。
- 迷走する教育熱と受験戦争
- 壮絶な企業サバイバル
- ネット先進国の光と影
- 人口構成急変の歪み
- 分裂する韓国社会
韓国は日本の隣国ながら、経済的な重要度があまり高くないためか、中国やアメリカほどには話題になることがありません。むしろ北朝鮮の方が政治的な理由で話題になるくらいです。
それでも、韓国がかなりの格差社会であることや非正規雇用者の割合が日本より圧倒的に多くいことなどは、たまにニュースになります。本書ではその様子が具体的に書かれているわけです。
韓国にはあまり興味がないと思われる方も多いと思いますが、本書の読み方としては、格差社会を極端に推し進めれば社会がどのような状態になるかを知るという点で興味深いと思います。
韓国は1997年のアジア経済危機をきっかけにして、IMFの管理下に入りました。以後、徹底した「構造改革」が行われたわけです。それによって経済は回復しましたが、その後に極端な格差社会が生じました。
日本も数年前には格差が広がったとよく話題になっていましたが、韓国と比較すると格差が開いているとは言えないようです。
受験、仕事などさまざまな競争を徹底させることによって韓国経済は復活しましたが、その分個々人のレベルで見た日々の生活は大変なようです。常に競争で、息をつく暇がないことが本書にリアルに描かれています。
本書を読むと、韓国のような格差社会はしょせん隣国のことであり、自国のことではないと思ってしまいますが、グローバル化した世界においては、すべての国々が競争相手であることを考えると、時間とともに日本にも競争の必要性が波及するはずです。
じっさいに日本の電機メーカーは、サムソン電子の存在に大きな影響を受けていると思います。韓国はたまたま隣国ですが、べつに隣国でなくても影響を受けます。競争は世界中に輸出されるからです。
現在は景気が悪くなってお金持ちの存在が目立たないためか、数年前ほどには日本で格差について話題になることが少なくなっています。さらに民主党が政権を取って、より格差をなくすような政策が取られつつあるように思うのですが、隣国では国民全体が必死に競争をしています。
個人的には大きな格差の存在は好きではいないのですが、今後の日本のあり方を考えるためにも、競争や平等についてより根底から長期的な視点で議論する必要があるのではないかと思います。
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この記事へのコメント
タイムリーですね。ぜひ帰国後に現地の様子のレポートをブログの記事にして下さい。楽しみにしてます。