2009年09月20日
『毒男の婚活』
原口 博光/岩崎 大輔著 2009年9月10日発行 860円(税込)
毒男の婚活 (アフタヌーン新書)
著者:原口 博光/岩崎 大輔
販売元:講談社
発売日:2009-09
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本書の共著者のうち、原口氏は元経済産業省のキャリア官僚で、現在はNPOで少子化問題を解決すべく結婚相談所に関連する活動をされています。岩崎氏はライターをされており、本書をくだけた内容にする役割も担われているようです。
タイトルにある「毒男」とは独身男性のことです。この言葉には自虐性やシニカルさを含んだな語感があります。「毒男」とありますが、恋愛に対して自信がなく消極的な独身男性一般が対象になっていると考えてよいと思います。本書の目次は以下の通りです。
- 毒男の特徴
- 毒男の毒を抜く
- 多様化した結婚情報サービスを賢く使いこなす
- ネット婚活、お見合いパーティ勝利の哲学
- 新たな婚活サービスを
- 私が経産省を辞めたわけ
本書の読み所は大きく二つあります。一つは、独身男性が恋愛や結婚活動において気を付けるべき点や行うべき点をアドバイスをされている実用的な部分。そしてもう一つは、原口氏のキャリア官僚としての体験や、その体験に基づくご自身の活動に対する意気込みが述べられている部分です。
原口氏の活動が結婚情報サービスに深く関係しているので、本書はそのあたりについての記述が充実しています。日本でも徐々にインターネットを通じた結婚情報サービスが充実しつつありますが、ネットでの結婚情報サービスによって知り合った結婚はまだマジョリティではありません。
このような場合は、それが本質的な価値を提供できれば、数が一定のレベルを超えるとおそらく急激に受け入れられるはずです。恋愛や結婚に対する人々の見方は、実は非常に柔軟性があります。時代が変わると常識も大きく変化することでしょう。
ここ数十年、日本において恋愛・結婚市場は自由化され続けてきました。市場は自由化されてきましたが、そこにアクセスするためのフォローはありません。アクセスできない人は全くできない状況です。そのため格差が生じてしまいます。
ネットを通じての市場規模が大きくなると、市場自体が活性化し、以前の状態に比べて一次的なアクセスは容易になるはずです。もちろん、そこからさらに関係が発展するためには、本書に書かれているような点に注意する必要がありますが、一次的なアクセスが存在するかどうかは大きな違いです。
ネットを通じての恋愛・結婚市場が拡大するかどうかは、その市場が信頼できるものであるかどうかが大きなポイントになります。昔の見合い、現在の職場や友人の紹介による出会いが進展しやすいのは、それらの出会いにはすでにさまざまな形で信頼が織り込まれているからです。そのような意味において、ネットでの市場における信頼性を高めようとしている著者の活動には大きな意味があると思います。
本書には数年間にわたる著者のキャリア官僚としての体験が書かれていますが、そのあたりも興味深く読めました。キャリア官僚は時間的に激務で、その割には給料も安く、恋愛をするような余裕はほとんどないようです。
そのような思いをしている官僚の方々が恋愛や結婚に対する制度設計をするとしたら、おそらくあまり開放的なものにはならないはずです。自分たちが男女関係で抑圧されているのに、ほかの人々を開放的にするような仕組みを作る気になるはずがありません。
官僚については悪くわれることが多いのですが、逆にもう少し若いうちからよい思いができるような仕組みになっていても良いのではないかと思います。官僚の方々がのびのびとした存在である方が、官僚によって作られた仕組みも自由でのびのびしたものになるのではないかと思います。
本当の意味において官僚制度を改革するとは、官僚の方々が自分自身を抑圧することなく、やりがいを持って活き活きと働けるような環境を設計することなのではないかと思います。