2009年09月25日
『ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門』
小宮 一慶著 2009年10月4日発行 1575円(税込)
ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門
著者:小宮一慶
販売元:ビジネス社
発売日:2009-09-29
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著者の本はよく紹介させてもらっていますが、本書は今までとはやや異なった趣向の本です。「未来経済」とありますが、ふつうの言葉で述べると未来予測です。
本書は大きく三つの部分に分かれています。最初の部分で、過去数十年の日本と世界の流れをたどり、次の部分で、本書のメインテーマである未来経済についての各論があります。最後に、次代の日本の国と企業に対しての提案があります。
最初の部分は非常に平易に書かれており、ある程度知識のある方には物足りない部分もあるかもしれません。著者の視点で解説されているのが読みどころですが、冷戦構造によって日本経済が「ゲタ」を履かせてもらっていたことが繰り返し強調されています。
冷戦構造が崩壊してからは、その「ゲタ」がなくなってしまったため状況が厳しくなっており、その状況に対応しないと生き残れないということです。今回の金融危機と景気後退については、日本が今後の展開に対する猶予になったとも書かれています。
日本は資源がないので、今後生き残っていくためには、知恵を出すしかないというのが著者の日本に対する考えです。また、世界経済が回復すれば、数年前のように外資が日本に進出することは目に見えているとのことです。
未来予測については、以下のようなテーマで大きく四つに分けられています。
- 資源、食糧、水、環境、排出権、経済ブロック化
- IT機器、インフラ、コンテンツ、ハイテク
- 少子高齢化、医療福祉
- 新興国の市場
未来予測といっても、長くて5年程度です。今後5年以内に各分野で話題になりそうな事柄が、過去のニュース記事にしたがって集められています。
ここでポイントとなるのは、それらのニュース記事を著者がどのように解説されているかというよりも、どのような記事が集められているかです。他の人が集めると違った記事になると思うので、選ばれたトピックスに著者の個性が表現されていると思います。
世界経済の発展については、金融危機の影響でやや話題が見えにくくなっていますが、景気後退が終われば、数年前に話題になっていたことが少し形を変えて復活してくると思います。本書で著者が予測されていることの多くも、その流れにあるようです。
最近数多く出されている著者の本を読むと、経営コンサルタントということで大前研一氏を思い浮かべる部分があります。大前研一氏は話題性の強い方でしたが、本人が望むような形では御自身の考えがあまり日本では実現しませんでした。
著者の方は少しずつですが、日本でじんわりと浸透するかもしれないような感じを抱かせます。大前研一氏とはタイプがかなり異なりますが、日本人には著者のようなスタイルの方が受け入れられやすいのかもしれません。