2009年09月30日
『不況学の現在』
佐々木 孝明著 2009年8月31日発行 2100円(税込)
不況学の現在
著者:佐々木 孝明
販売元:山川出版社
発売日:2009-09
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この記事を書き始めて初めて気付きましたが、本書は歴史教科書を出版している山川出版社から出ています。本書に歴史的な話が多く出てきたのも納得がいきます。
著者は政治家の方の政策担当秘書などをされていたようです。最初の部分で、政治家の方の経済学的素養の不十分さについて、少しだけ触れられています。本書の目次は以下の通りです。
- 不況は人類の誕生とともに
- 供給制約の時代を超えて
- われらの時代に寄せて
- 経済学者の登場で世界は
- 二項対立からの脱却
- 不況、この不可思議なる現象を論じる
「不況学」という言葉は聞いたことがありませんが、本書では不況を軸にして歴史や経済が語られています。
現在はまさに世界的な不況のまっただ中ですが、このようなときに不況について深く考えておくのもよいと思います。好況の時にはなかなか不況のことは考えることができないからです。
本書のような本によくありますが、さまざまな見方や考え方を紹介し結局はっきりした結論が出ないことが多いのですが、本書でもそのような読後感はあります。
不況を解消することは、比較的全体のコンセンサスが得やすい事柄ですが、現時点においても不況の原因やその解決方法については百家争鳴です。経済学者間でも全く正反対の意見があることすらあるようです。
その時代に応じて結論らしきものは言われることもありますが、後の時代から振り返ると必ずしもその説が正しかったと結論づけられるわけでもありません。
おそらく不況の解消ということは、その時代と状況に応じて原因や解決方法に違いが生じるものなのかもしれません。経済学説についても、時代の必要に応じて時代に適したものが出現しているように思われます。
そう考えると、逆にある時代に流行した経済思想からその時代が要求していたものを理解できるかもしれません。
本書で述べられているさまざまな考え方の中で、ここで書いておきたいのはシュンペーターが不況を有益なものと考えた理由です。以下の四つがあります。
- 時間が空くことにより反省の機会ができる
- 倒産リスクが高まるため企業経営の緊張感が高める
- 人や企業のふるいとなる
- 供給過剰によりイノベーションの成果が広まりやすくなる
以上のような利点だけではなく、著者は以上のシュンペーターの考え方に疑問点も挙げられてはいます。
もしも不況に以上のような利点があるとすると、国が過剰に保護的になるのはせっかくの不況のメリットを減少させてしまうかもしれません。
不況は人で考えると過労や病気に相当すると思いますが、それらには自分を振る返るそれなりの意味があることがあります。
人間は不況や病気をなくそうとしますが、良いときと悪いときのリズムがないのも何となく不自然な感じがします。もちろん、不況や病気があれことがよいというわけでもないのですが。


