2009年10月03日
『日本はなぜ貧しい人が多いのか』
原田 泰著 2009年9月20日発行 1260円(税込)
新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学
著者:原田 泰
販売元:新潮社
発売日:2009-09-26
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まだアマゾンで画像がありませんが、新潮選書の新刊です。著者は著明なエコノミストの方で、本書はNIKKEI NET BIZ+PLUSでの連載コラムがまとめられたものです。このコラムは現在も続いています。
本書のコラムは、ここ5年くらいの日本経済においてよく話題になったテーマが数多く集められており、古いものは新しい情報を加えて加筆されているようです。以下のような章立てで大きく分類されています。
- 日本は大丈夫なのか
- 格差の何が問題なのか
- 人口減少は恐いのか
- 世界に開かれることは厄介なのか
- 経済の現状をどう見れば良いのか
- 政府と中央銀行は何をしたら良いのか
日本経済に関心のある方であれば、興味を持ちやすいことがテーマになっており、実際に問題としても大事なことばかりです。
本書はコラムを集めたものですが、エコノミストによって書かれたものらしくデータとその分析が充実しています。なんとなくそう思われていることについて、データの分析から逆の結論を導かれていることが多く、その意外性が本書の読みどころです。
その一方、著者が随想風に思いついたことを書かれていることもあり、著者の形式にしばられない発想も面白いところです。両者が適度に混在しているところが、本書の特徴かもしれません。
本書には60以上ものコラムがありますが、すべてのタイトルが疑問形になっています。それらの問いに対して、自分で答えを考えてから読み進めると答えに意外性があるのでより面白いと思います。
著者は高齢化は問題であると思われているものの、人口減少についてはそれほど問題視されていないようです。海外とのやりとりについては開放的、金融については緩和的なスタンスを取られているようです。
データの分析については、経済データの性質上かなり単純化されているところもあります。結果をすべてそのまま素直には受け入れにくいところがなきにしもあらずですが、やはり単純化した仮定をおいて結論を出すことには議論のたたき台としても意味があると思います。
本書は結論も興味深いのですが、その結論を導き出すデータの選び方や思考過程を参考にする本です。一流のエコノミストの思考回路といったものを学ぶことができます。