2009年11月04日
『「文系・大卒・30歳以上」がクビになる』
深田 和範著 2009年10月20日発行 714円(税込)
「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法 (新潮新書)
著者:深田 和範
販売元:新潮社
発売日:2009-10
おすすめ度:
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タイトルに「文系・大卒・30歳以上」とありますが、これはホワイトカラーを言い換えたものです。本書のテーマは、これからホワイトカラーの大リストラ時代が始まるという著者の予測についてです。
本書には現実的、悲観的な話が多く出てきます。読み手が「文系・大卒・30歳以上」の方であれば、読んでいてつらく感じる部分もあるかもしれませんが、つらく感じるということは問題意識があるということなので、つらく感じない場合の方が問題になるのかもしれません。本書の目次は以下の通りです。
- これからのリストラ対象はホワイトカラーである
- 「自分だけは大丈夫」という根拠のない思い込み
- 「がん細胞」となったホワイトカラー
- 人事部長M氏の見た光景
- 真っ先に切られるのはどういうタイプか
- 大量失業時代にどう対応するか
- ホワイトカラーの大失業時代を乗り越えて
以上の各章のタイトルはそれぞれの内容を表していると思います。ホワイトカラーがリストラ対象になると書かれている主な理由は、ホワイトカラーの生産性が低い割には賃金が高く、現代日本における不況においては、企業を合理化するためにはそれが効率が高いからのようです。
本書ではホワイトカラーの定義や人数などホワイトカラー自体について一般的なことも書かれており、ホワイトカラーを通して日本の雇用問題を考えることもできると思います。
ホワイトカラーの生産性が低いと本書には書かれていますが、昔と比べるとホワイトカラーの方々は向上しようという意欲はあるのではないかと思います。書店で仕事術、自己啓発書、対人術の本が一昔前に比べてはるかに多くの数を目にするようになったことからそのことが推察されます。
本書にも書かれていますが、リストラなどで雇用の流動性が高くなることは、必ずしも悪いことではないと思います。ただし、リストラは職業訓練などのセーフティネットとワンセットになっている必要があります。
リストラと離婚は似ている面がありますが、今までの日本の雇用状況は、女性がいったん離婚すると、女性の働き口がなく再婚も難しい昔の状態のようなものです。
離婚したとしても、それなりの働き口があり、再婚市場も厚みがあれば、離婚に対するマイナスのイメージは少なくなることでしょう。雇用もそれと同じです。
離婚の可能性は結婚生活に適度な緊張感をもたらし、逆に結婚生活を充実させる可能性もありますが、リストラも似ている面があると思います。ある程度のリストラの可能性があった方が、働くときに適度な緊張感があってよい場合もあるかもしれません。
本書では、リストラや失業の悪い点だけを見ているだけではありません。たんなる慰めではなく、むしろ積極的な意味を見いだしている記述すらあります。これは失敗をどう考えるかということと似ています。
著者が書かれているような「大失業時代」が今後実際に来るかどうかは分かりませんが、そうならないにしても一人一人が生産性を上げることには大きな意味があると思います。仕事術の本などがよく売れているのは、時代の要請があるのかもしれません。
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この記事へのコメント
この書評と、本誌が面白いなぁと感じました。
書評を評価いただきありがとうございます。ブログ少し読ませいただきました。マーケットの状態は今一つですが、今は仕込む時期と考えてコツコツ投資を続けたいものですね。
小生の本をブログで取り上げてくださり、ありがとうございます。
小生、まさしく、あの本のとおりにリストラされそうになっております。
詳しくは、このブログをみてください。
http://ameblo.jp/kmsh114/
ブログ拝読しました。リストラについての本を書いている方までが、リストラにあいそうとは大変な時代だと思います。今は時代の過渡期かもしれませんね。