2009年11月07日
『M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?』
岩崎 日出俊著 2009年11月2日発行 1575円(税込)
M&A新世紀 ターゲットはトヨタか、新日鐵か?
著者:岩崎 日出俊
販売元:ベストセラーズ
発売日:2009-10-24
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著者は日本の銀行や海外の投資銀行に長年勤務されており、金融機関でのキャリアが長い方で、数多くのM&Aにもかかわってこられた方です。
本書では内外の豊富な具体例を挙げて、M&Aの仕組みや意味、そして評価方法などについて解説されています。本書の目次は以下の通りです。
- 赤いハゲタカはトヨタを買収するか
- なぜマイクロソフトは任天堂を買収しないのか
- M&Aを成功に導くポイント
- 買収を陰で演じた投資銀行はどうなったか
- 新世紀のM&Aとはどういうものか
数年前は盛んにM&Aに関する報道がマスコミを通じて世間を騒がしていましたが、世界的な景気後退のため現在は「小休止」になっています。今後はM&Aは話題になりそうにないとさえ思われるほどですが、景気が回復してくれば再び世界的にM&Aは活発になるはずです。
今回の金融危機によりグローバル資本主義や投資銀行は終焉を迎えたという論調も見られますが、人々がより安くてよりよいものを求め続ける限り、資本主義はグローバルに展開していくはずであり、本書でもそのような予想がされています。
投資銀行についても、アメリカの巨大投資銀行は以前のような形では残っていませんが、本来の投資銀行業務は継続しています。変わったのはハイレバレッジでビジネスを行うことであり、もともとの業務は現在も必要とされています。
投資銀行が数十兆円規模でレバレッジをかけてビジネスをすることができたのは、それまでのビジネスの成果に対する信用があったからであり、金融を通じて価値を創造してきたことの裏付けがあったはずです。
本書ではそのもともとの価値の部分に対する評価の見直しがされています。今後新興国を軸にして大規模に世界経済が発展する状況になれば、M&Aなどにおける本来の投資銀行の業務の重要性は高くなることでしょう。
本書を読むと、今後の展開の予想がある程度理解できるようになると思います。図表も多用されており、金融の知識がほとんどない方でも分かりやすいようになるべくやさしく説明されています。
過度な敵対的買収などあまりにも侵襲的なM&Aは経済の発展にとって望ましくないと思いますが、資本主義の緊張感は民主主義の悪い面を補うプラスの面があると思います。
いつになるかはわかりませんが、今後世界的に景気回復が著明になってくると、再びM&Aが活発になり経済が活性化すると思います。グローバルなM&Aをあまりにも否定的にとらえてしまうと、日本が世界経済の成長から取り残されてしまうということになってしまうかもしれません。本書を読むとそのように感じると思います。