2009年11月19日
『こんな男は捨てられる』
山崎 世美子著 2009年11月24日発行 798円(税込)
こんな男は捨てられる (ソフトバンク新書)
著者:山崎 世美子
販売元:ソフトバンククリエイティブ
発売日:2009-11-18
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著者は探偵のキャリアがあるので、男女の修羅場における現場の裏側を、仕事を通じて数多く目にされている方です。現在は恋愛・離婚カウンセラーとしても活動されているようです。
本書は豊富な事例をもとに、主に女性の視点から男性に対して女性と接する際ののアドバイスを、さまざまシチュエーションごとに解説しています。本書の目次は以下の通りです。
- 女が男を捨てる時代!?
- 出会いの場で脱落してしまう男たち
- 同棲・結婚で直面する生活習慣の違いに気をつけろ
- 浮気は男女の絆を崩壊させる!
- SEXには要注意
- 男女間のさまざまなトラブルは絶えないもの
- 男と女の良い関係のために
本書のような内容の本が出るのは、女性にとって生きやすく、男性にとって生きづらい時代になっていることがその背景にあります。女性が生きやすくなっている理由は、女性も容易に仕事に就けるようになり、昔のように男性に経済的に依存する必要がなくなったからです。
女性が男性と対等に働けるようになってようやく男女が平等になったと思われることもあるかもしれませんが、本書でも豊富な事例をもとに書かれているように、社会的に男女が平等になると、総合的には女性の力が強くなります。
なぜなら、もともと女性の方が日常における生活力があるからです。とくに年齢を重ねるごとに男女の生活力の差は広がります。本書にもあるように、年を取ってから女性に「捨てられた」男性はつらい状況になるようです。
男性の立場からすると、本書に書かれていることは女性の立場に偏りすぎているようにも感じるのですが、女性側に重点が置かれた意見が通りやすいことからも、女性が優位になっている時代であることがわかります。
男女の恋愛の進行プロセスをスムーズにするためには、少なくとも表面的にでも男性が「優位」な状態である方が望ましいのですが、現在のような時代状況だと、恋愛をする場合に男性側に大きな負荷がかかっていることがわかります。男性にとっては恋愛しづらい時代です。
本書の内容が女性中心の男女観に偏っていることは、以下の記述からもわかります。
「平凡こそ、非凡である。平凡な幸せこそがもっとも非凡なもの。妻や子どもに恵まれているのに、「平凡だ」「退屈だ」と言いたくなるのは、幸せなんだからです。
その幸せこそ、もっとも大切なものであり、末長く守っていかなければいけないもの。
このことに男は気づかなければいけないのです。」
これはまさに女性の理想とする男女関係が表現されています。
著者が探偵をされていることもあり、本書は浮気についての話も豊富で、本書の読みどころの一つですが、浮気についても女性の視点から書かれています。
ステレオタイプな見方ですが、女性はなるべく価値の高い男性と一対一の安定した関係を築きたい、男性はなるべく多くの女性と幅広く関係を持ちたい、男女関係が対等なものであるならば、その両者の間のどこかに男女の妥協点があるはずです。
これは売り手はなるべく高く売りたい、買い手はなるべく安く買いたい、実際の売買価格は両者の希望価格の間のどこかにあることと同じです。
もしも女性がパートナーである男性が浮気をしないことを当たり前だと思っているのならば、買い手が売り手は仕入れ値、つまり売り手が全く利益が出ない価格で売るのが当たり前であると思っているようなものです。
男性が全く浮気をせず、女性がそのことを男女の関係として当たり前だと思っているような状態は、以上のように考えると明らかに女性側に有利になっている話です。
そのような状態が望ましい男女のあり方として正論のように語られる、そしてそれを男性が受け入れざるを得ない状況にあるかもしれないということからも、現代の日本は女性が圧倒的な有利な状態であることがわかります。
女性が圧倒的に優位になると、女性にとってはよいと思われるかもしれませんが、男女の力関係のバランスが偏りすぎることは女性とってもあまりよい状態ではありません。男性のパワーがますます減衰し、男女の恋愛における引力のはたらき、つまり男女が互いに惹かれあう恋愛の喜びが少なくなるからです。
時代が女性化の方向にあることは大きなトレンドなので、男性性の衰退をどのように回復して全体の男性性・女性性のバランスを取るかは、今後の大きなテーマになるのではないかと思います。