2009年11月24日
『経済学は温暖化を解決できるか』
山本 隆三著 2009年11月13日発行 756円(税込)
経済学は温暖化を解決できるか (平凡社新書)
著者:山本 隆三
販売元:平凡社
発売日:2009-11
おすすめ度:
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著者は商社で長らく仕事をされた後、大学の教官になられた方のようです。本書のタイトルには「経済学」とありあますが、経済学的な考え方を通じて温暖化問題に対する合理的な考え方をオーソドックスに理解できる本です。
温暖化問題はここ数年よく話題になるテーマですが、さまざま利害や不確実性が絡み合い、なかなか世界全体の合意が得られにくい問題です。本書の目次は以下の通りです。
- 温暖化問題の短い歴史と現状
- 温暖化問題の「不確実性」を考える
- 米国とEUの温暖化問題への取り組み
- 日本の温暖化問題への取り組み
- 温室効果ガス削減への経済学
- 経済的手法は温暖化問題に有効か
章のタイトルからも想像できるように、しっかり書かれている本です。しっかり書かれているだけに、手に汗握るような面白さはないかもしれません。
温暖化問題や環境問題の難しさは、その背後に経済学的な問題があるにもかかわらず、感情的に語られたり倫理的な問題になっていたりすることです。
話をするときいずれかにフォーカスし過ぎると、対話自体が成り立たなくなる可能性すらあります。そのような点においては、結婚についての問題と同じような難しさがあるかもしれません。
本書で面白かったのは、二酸化炭素排出が地球環境に与えることへの対策について、保険として考えていることです。二酸化炭素濃度の上昇と地球温暖化についての因果関係は科学的に確定したものではないようですが、もしもそうであった場合に備えての対策は保険として考えるのがよいということです。
保険としてみなすのはよいと思うのですが、比較的統計的なデータがはっきりしている生命保険や損害保険ですらその経済学的な価値を人間が直感的に把握するのは容易ではありません。
ましてや、統計的なデータがはっきりしていない温暖化対策を保険として考えるのは、その確率の計算などについて恣意的な部分が入り込む余地が大きくなります。
温暖化対策はさまざまな産業や各国の利害と関係するので、保険的に考えられるからといって、合理的に解決できるわけではないと思います。
そのように考えると、おそらく温暖化問題は経済学的に解決されるというより、世界の国々の力関係によって今後のあり方が決まってくることになるはずです。おそらく温暖化問題に対する経済学の役割は、あくまで二次的なものになるのではないでしょうか。
もちろん経済学的に解決されればよいと思いますが、不確定要因が多すぎるように感じます。もちろん合理的な思考を追求していく過程は大事であるとは思いますが、温暖化問題は経済学的問題というより政治的な問題かもしれません。
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この記事へのコメント
読了したが、余り感動しない。ただし、そのエピローグで、
QTE 地球温暖化問題は、冷戦が終了し、仕事がなくなった科学者たちを大量にかかえた欧米諸国が、国際的影響力の拡大、新たな商売のネタ、中東へのエネルギー依存度の低減などを狙ってでっち上げた「世紀のペテン」である。そこにクリーン・エネルギーであるLNGや原子力の関係者、国連官僚、認証機関、コンサルタント、金融機関などが乗っかったのだ。
当面、排出権や環境ビジネスは、サブプライム問題に端を発する世界景気低迷の救世主として脚光を浴びる。しかし、2020年ごろには、二酸化炭素の排出が増えても気温がほとんど上昇しないことが明らかになり、温暖化問題見直し論が台頭する。やがて世界各地で寒冷化による農産物や森林漁業資源に対する被害が発生し、温暖化問題バブルは崩壊する。UNQTE
参考サイト:
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Great_Global_Warming_Swindle#Disputing_the_global_warming_consensus
Snowbeesコメント:上記WIKIを読むと、温暖化批判論者=dissenting viewsは、脅迫状を送られるなどハラスメントを受けていると。かっての「ホローコスト」論争における嫌がらせに類似していると。なにしろ、「受益当事者」は、巨大なグローバル企業集団と、政府機関を網羅するので、それに刃向かうと報復が恐ろしいと。
URLを張付けます:
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Great_Global_Warming_Swindle#Disputing_the_global_warming_consensus
ご紹介いただいた本は目を通してないので何とも言えないのですが、ビジネス小説のジャンルで有名な著者が排出権取引をテーマした小説を書かれていることに時代を感じます。
書店で機会があれば目を通してみようと思います。