2009年11月30日
『お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣』
トマス・J・スタンリー著 本田 健訳
2009年12月16日発行 1523円(税込)
「ふつうの億万長者」徹底リサーチが明かす お金が“いやでも貯まる”5つの「生活」習慣 (East Press Business)
著者:トマス J スタンリー
販売元:イースト・プレス
発売日:2009-11-25
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原著者は『となりの億万長者―成功を生む7つの法則』『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』などの本で有名な研究者です。後者の本は文庫になっており、このブログでも紹介したことがあります。訳者もよく知られている方です。
本書は過去に書かれた著者の本のダイジェスト的な内容で、本文も二色刷りで読みやすくなっていると思います。本書の目次は以下の通りです。
- 間違いだらけの「億万長者像」
- 億万長者はものごとの本質を見抜く「目」を持つ
- 億万長者は浪費の誘惑をはねつける「耳」を持つ
- 億万長者は他人の評価に依存しない「舌」を持つ
- 億万長者は堅実なペースで進む「足」を持つ
- 億万長者は危険をかぎ分ける「鼻」を持つ
本書は繰り返して同じことが説明されています。「億万長者」になろうと思ったら、収入以下の支出で生活して浪費はしないようにするのがよいということです。
浪費の中でも、とくに顕示的消費を戒めています。顕示的消費とは、自分がお金持ちのような気分を人に顕示するため、あるいは自分で自己満足するための消費です。
収入以下の支出で生活すると、お金が余分にできますが、それを価値を減らすものに変えることが消費であり、価値を増やす可能性があるものに変えることが投資と考えてもよいでしょう。
消費と投資はお金を別のものに変換するという意味では同じことですが、変換したものが価値を減少させるか価値を増大させるかという点では反対になります。このように考えると、バブルの時に株を高値掴みするのは株式「投資」とは言っても消費に近いのかもしれません。
本書は顕示的消費の戒めについて繰り返し書かれていますが、もともとアメリカで書かれている本ということがあると思います。日本は昔から顕示的消費については、「成金趣味」などという言葉もあるように、一般的にあまりよい評価はされていません。
日本人にとって必要なのは、顕示的消費をしないことよりも、消費をしないで貯めたお金をどのように投資するか、つまり価値を産み出すものに変換するかという点です。
本書ではお金と幸福の関係についてもいくつか考察されています。お金をたくさん使うことによってこころの豊かさが得られるかどうかや幸せになれるかどうかは、数多くの異性とセックスをすることによって愛や幸福を得られるかどうかという問題と似ている面があります。
これらの問題は、結局どちらを選択するかという問題ではなく配分の問題です。本書で著者も必ずしも消費をすること自体が悪いと言っているわけではなく、分不相応な消費をすることが望ましくないと主張されているだけだと思います。
倹約による貯蓄や、貯蓄にもとづく投資があるうえでの適切な消費は、人生に潤いをもたらします。これは先ほどの異性関係で考えても同様です。
人生における多くの問題はいかに配分するかによって解決することが多いのですが、お金の問題についても配分は重要です。配分の形は国によっても異なり、本書はどちらかというとアメリカ人向けの内容ですが、日本人が読んでも役に立つ部分は少なからずあると思います。