2009年12月07日
『恋愛格差社会サバイバル モテ本案内51』
水野 俊哉著 2009年12月5日発行 1365円(税込)
モテ本案内51
著者:水野 俊哉
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2009-12-03
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独自のフォーマットで本を紹介するという著者のスタイルはすっかり定番になりました。過去のものは、成功本、ビジネス書、マネー本などでしたが、今回は満を持してのモテ本です。
恋愛・結婚についての本に目を通すときは、男性向けか女性向けかによって大きな違いがあることが一般的です。本書は主に女性向けに書かれていますが、よく読むと男性も読者として対象になっていることがわかります。
本書が書店でどのようなコーナーに置かれているかは、その店によって違いがあるかもしれません。ちなみに自分が購入した書店では、文芸などの新刊が平積みになっているところにありました。
置き場として本命はピンクっぽい色が目立つ女性向け恋愛コーナー、二番手がサブカル、その次がビジネス書の売り場かもしれません。
本書では51冊のモテ本、つまり恋愛・結婚本が幅広く採りあげられています。婚活本も少なからずあることからもわかるように、比較的最近のものが多いのですが、古典的な良書もいくつかあります。
ぐっどうぃる博士との対談や、いつものように紹介本のエッセンスを著者のオリジナルな視点からまとめた「あなたを結婚へと導く10のステップ」などもあり、本の紹介と同じくらい、あるいはそれ以上に楽しむことができます。
本書が主として女性向けであること、本書で紹介されている本の多くが女性向けであることは、恋愛・結婚本の読者の多くが女性であること、それらの本自体が女性向けに書かれたものが多いことを反映していると思います。
女性向けの本が多いのは、ヒトの進化の長年にわたる歴史において、女性が生存する手段がよい異性を見つけて何らかの関係を持つことである期間が圧倒的に長かったからでしょう。
女性は本能的によい異性を吟味・選択して獲得することに本質的な興味を持つようにできています。恋愛・結婚向けの本の多くが女性向けなのは、自然なことです。本書が本書のような形になっているのは、大きく考えると長年の人類の進化の歴史を反映しているからです。
ちなみに男性が本質的に関心があるのは仕事です。ビジネス書はつまるところ仕事の本ですが、女性がビジネス書を以前よりは読むようになったにしても、やはり仕事術などのビジネス書の読者は多くが男性のはずです。
男性が恋愛本よりビジネス書に本質的に関心があるのは、仕事の能力をアップさせると自然に女性もついてくることを本能的にわかっているからです。
しかしながら現代では、男性が女性にモテるために必ずしも仕事ができることだけでは不十分になっている面があります。昔は仕事ができさえすれば、経済的な力がなかった多くの女性から熱い視線が注がれていたのでしょうが、現代は女性が経済力をつけたため、モテにおける仕事の重要性の割合が低下しています。
その割には男性は女性ほど恋愛・結婚について考えることに熱心ではありません。男性向けのモテ本が以前よりは増えてきてはいますが、やはり女性向けの本と比べると圧倒的に種類が少ないことは、少し書店を散策すればあきらかです。
つまり一般的な男性は、時代状況を考えるとモテ本の役割を過小評価していることになります。モテ本を読むことはプライドが許さなかったり、書店でレジに持って行くこと自体も心理的に抵抗があったりします。ちなみに本書を買うときは女性の店員さんにカバーをつけてもらいましたが、自意識過剰的に少しだけ恥ずかしい感覚がありました。
逆に考えると、過小評価されているものはそれを活用すると利益の源泉となります。なぜなら多くの人が過小評価しているため、資本主義の原則により利潤が薄まりにくいからです。
よって、本書のような恋愛・結婚について書かれている本は、もちろん女性にとって意味はありますが、男性が読んでも大きな意味があります。むしろ男性だからこそ大きな意味があるとも言えるでしょう。
もちろん男性の本来の役割を考えると、仕事の方をまずは優先するのがよいのですが、仕事を頑張っているにもかかわらず、現代では異性関係において十分に満足できるような状況になっていない男性も少なくないことでしょう。
そのような異性関係における男性のボトルネックは、「表面的な」恋愛スキルであったりします。ボトルネックの解消はコストとリターンで考えると有利なことが多いので、本書で紹介されているような本は、読むことに抵抗のある人ほど目を通してみる意味があるはずです。
本書に興味のある方はもちろんのこと、女性向けのモテ本を読むことに抵抗にある方であればなおさら、本書のようなダイジェスト本に目を通しておくことはおすすめできると思います。
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この記事へのコメント
その点、bestbookさんの場合、さすが女性向けのモテ本も読まれているだけあって、説得力があります。
脱帽しますた!
書評ありがとうございます。
最近は、青山 圭秀さんの本など、縦横無尽に書評されていて、一読者的に感服しております。
男女の恋愛のトピックも、読み手のスタンスにより、受け止め方は様々ですが、いつもクールな分析を楽しみにしているので、今回の書評も色々感じるところが多いです。
アカデミックな視点からの解説、ありがとうございます。
たしかに、書店で女性向けの恋愛本が置いてある近辺には近寄りがたいものがありますね。
とくに女性の方が立ち読みをされていると、場違いのところにいるような冷たい視線を感じます。実際場違いなのでしょうけど・・・(笑)。
ブログの記事もたまには女性向けに書きたいと思っているのですが、自分にできることは女性向けのモテ本くらいしかないかなと思っております。なかなかsmoothさんのようにはまろやかな女性性を出すことができません。
>水野さん
著者よりコメントいただきありがとうございます。また、お忙しい中ブログに目をお通しいただいているようでありがとうございます。
青山圭秀さんの本はここで紹介するかどうか迷いましたが、やはり面白いので思い切って紹介しました。書評をお褒めいただきありがとうございます。
恋愛はほとんどの人にとって重要な問題にもかかわらず、考え方に多様性があって話題が尽きることがないですね。
今回の御著書ではその多様性の興味深さがいつものスタイルで巧みに表現されており、とくにキャッチフレーズには唸らされるところが多々ありました。
これまでの流れからすると、次の企画はスピリチュアル本でしょうか。スピリチュアル本は、いちばん水野さんらしさが出るのではないかと期待しています。いずれにしろ次回も楽しみにしています。