2009年12月09日
『内向の世界帝国 日本の時代がやってくる』
増田 悦佐著 2009年12月3日発行 1785円(税込)
内向の世界帝国 日本の時代がやってくる
著者:増田 悦佐
販売元:エヌティティ出版
発売日:2009-11-26
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著者は、さまざまな角度から日本の将来について強気の著作を数多く書かれている方です。本書に書かれている内容は、今までに書かれた本の中で部分的に述べられていたことですが、本書では帝国循環論の視点から、日本の将来について強気な理由がまとめられています。
日本の将来についてどれくらい著者が強気かということを具体的に述べると、今後150〜200年にかけて日本は世界の覇権国になるとまで書かれているほどです。本書の目次は以下の通りです。
- この金融恐慌を本物の大恐慌にしたかったら・・・・・・
- 経済覇権交代の法則
- 先進国を周期的に襲う「どん欲」症候群の不思議
- ナンバー・ツーであることの不安が、愚作を採用させる
- 単一言語が覇権を呼び寄せる
- 経済覇権国の性格が激変する
- ピンチはチャンス、チャンスはピンチ
現在の日本において、そして世界全体で考えても、今後100年以上にわたって日本が世界の覇権国になると予想している人はほとんどいないと思います。
このブログを書いている時点で、本書に対するアマゾンのレビューの評価は必ずしも高くなく、著者が本書の主張を本気で書かれていないだろうとすら述べられているものまであります。
実際のところは著者でないとわかりませんが、本書の文章は著者はある程度本気なのではないかとも思える筆致です。
著者が日本経済の将来に対して強気な理由はいろいろと書かれていますが、帝国循環論の視点からの予測、日本が物作りなどを通じて地道に価値があるものを創造していること、日本はバブルをいち早く体験したので今回の金融危機でそれほどダメージを受けていないこと、人口の多くが都市に密集しているためエネルギー効率が高いこと、民衆にパワーがあることなどです。
本書では以上のこと以外の理由もいくつか書かれていますが、本書の論点の軸は帝国循環論です。
数百年前からの覇権国の歴史を振り返ると、オランダ→イギリス→アメリカの順番になっています。それまでの覇権国が衰えて次の覇権国になる国には、過去の歴史からさまざまな条件があるようですが、著者のよれば日本はその条件を満たすということです。
以前「バブルの先見性」という記事を書きましたが、そこで日本はバブル崩壊後バブル時に期待された成長をまだしていないと述べました。もしも本書の予測が実現するのであれば、やはりバブルには先見性があることになります。
本書の帝国循環論は、国というもののあり方が今までと変化がないということが前提になっていると思います。グローバリゼーションが高度に進むと、国という組織単位の重要性が低くなるかもしれません。
また、日本的なもののあり方は今後の世界において重要性を増すとは思いますが、日本そのものが発展することとは結びつかないかもしれません。
日本的なものが広まったとしても、国としての戦略性がないと必ずしも国の利益に直接結びつきません。たとえば日本のアニメは世界に広まっていますが、今のところ国にそれほどのリターンをもたらしてはいないと思います。
本書の予測が当たるかどうかについては、なんといっても150年後の話なのでその結末を見届けることはできませんが、日本が「覇権国」になることは今後の日本が世界全体にどれくらい戦略的に効率よく貢献できるかにかかっていると思います。